株式会社いつつ

将棋を楽しむ 将棋を教える 2017年9月21日

将棋の駒をなくさないための工夫5つ

中倉 彰子

どんなに気をつけていても、無くなってしまうもの。それが将棋の駒です。確かに、将棋の駒は思いのほか軽くて小さく、大人でも、扱い慣れていないとポロっと手からこぼれ落ちてしまったり、使っているうちにどこかへ行ってしまうこともあります(駒が勝手にどこかに行くわけではないのですが^_^;)。

こんなに無くなりやすいにもかかわらず、40枚ある駒のうちたった1枚でも無くなってしまうと、将棋ができなくなってしまうのだから困ったものですよね。なので、小さい子どもの場合、仕方のないこともあると思うのですが、できる限り駒を失くさないための努力をするに越したことはありません。

そこで今回は、いつつが将棋教室や将棋イベントを開催するうえで凝らしている、駒が無くならないための工夫についてお話ししたいと思います(^^)

1.正しいしまい方を身につける

駒のしまい方にも作法があります。
駒のしまい方にも作法があります。

将棋の駒には、正しいしまい方があります。

バラバラになった駒の中から、まずは王と玉、次に飛車2枚、その次に角が2枚と、駒の価値が高い順(玉→飛→角→金→銀→桂→香→歩)に探し出し、それぞれ枚数が揃っているかを確認して駒袋や駒箱の中にしまいます。

また、歩は18枚と枚数が多いため、小さな子どもだと、「1、2、3、4、5、6、・・・アレッ( ̄ー ̄)」となったり、よく見ると2回同じ駒をカウントして数え間違えていることもよくあるので、3枚の1組のチームを6つ作ると、枚数がちゃんと揃っているのか一目で確認することができます。

将棋教室や道場、将棋大会では、自分が使った後に別の人がその駒を使います。また、家の駒であったとしても、将棋は1人でするものではないので、駒が1枚でも無くなると他の人が将棋ができなくなってしまいます。だからこそ駒を正しくしまうというのは、将棋をするうえで本当に大切なことなんです。慣れないうちは確かに時間がかかってしまいますが、将棋の対局が終われば、ちゃんと駒を数えてからしまうという習慣を身につけましょう。

駒の正しいしまい方については、初心者向け将棋テキスト「はじめての将棋手引帖」2巻3巻に動画解説がついています。

2.駒をしまわない時は初期配置に戻す

対局の結果報告など、ちょっと席を外す時も駒を初期配置の状態に。
対局の結果報告など、ちょっと席を外す時も駒を初期配置の状態に。

例えば、道場で対局結果を係りの人に伝えに行く時、将棋大会でまだ次の対局がある時など、「すぐにまた駒を使うから」ということで駒をわざわざ駒袋や駒箱にしまわない場面があります。こんな時、指しっぱなしの状態や、適当に駒をまとめた状態で置いておくというのはとても危険です。これだと、目を離したすきに駒がどこかへ紛れ込んでしまったり、盤の上から落ちていたりしても、誰も駒がなくなったことに気が付かないですよね。

そこで、一時的に将棋盤を離れる時は、できるだけ対局の初期配置の状態に戻しておきましょう。これだと、駒が足りない時は誰が見ても一目瞭然ですよね。

3.駒に愛着を持ってもらう

子どもが駒に愛着を持てるような工夫が大切です。
子どもが駒に愛着を持てるような工夫が大切です。

いつつの将棋教室に通う女の子にこんなエピソードがあります。その女の子(年中さん)は小学生のお姉ちゃんとママとで将棋教室に参加してくれていたのですが、将棋を習う前に将棋の絵本「しょうぎの くにの だいぼうけん」を読んでくれていました。物語では、個性豊かな将棋の駒のキャラクターが大活躍するのですが、その女の子は中でも歩兵のキャラクター「ふうくん」が大好きでした。

いつつの将棋教室では、毎回駒を数えてからレッスンを終えるようにしているのですが、その女の子は実際の将棋でも絵本の中の「ふうくん」への愛は変わらないようで、「ふうくんはわたしが数える!」と言って楽しそうに歩の駒を3枚×6セットに並べ始めました。途中でママが手伝おうとすると「ダメ〜!」っと言いながら、ちゃんと最後まで自分で数えて駒袋にしまうことができました。

なんともほっこりするエピソードなのですが、将棋の駒をただのゲームの道具としてではなく、こんなふうに愛着を持って接してもらえるといいのかなぁと思います(^^)

絵本のキャラクターからでなくても、例えば「動きがおもしろいから桂馬が好き」「名前に金が入っているから金が好き」といった理由でも構いません。駒に愛着を持って接することで、駒を大切にする気持ちが生まれ、その結果駒を無くしてしまうということも少なくなるのだと思います。

また、愛着を持つと言う意味では、将棋の駒を磨くという行いもいいかと思います。詳しい磨き方については過去のいつつブログ「将棋の駒を磨くということ〜駒も心も清らかに〜」という記事でも紹介させていただいているのですが、丹精を込めて磨く駒は子どもたちにとっても特別なものになると思います。

4.駒の価値を子どもに伝える

いつつのイベントで名人戦の駒を雑に扱う子はいません。
いつつのイベントで名人戦の駒を雑に扱う子はいません。

大山康晴十五世名人が、「強くなるためには良い道具を持つと良い」と上達への心得を説いたのをご存知の方も多いのではないでしょうか。これは、それなりの道具を持てば、愛着もわき、一局一局大事に丁寧に指す気持ちから、きっと上達につながるということなのかなと思います。

大人であれば、高価なものをいい加減に扱うようなことはないと思いますが、小さなお子さんとなると、もしかすると「子どもにものの価値が分かるはずがない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、いつつが主宰する将棋イベントでは、第74期名人戦第3局で実際使用された盤駒(大変貴重なものです)を子どもたちに実際に使ってもらうのですが、そこでは、誰一人として、その駒を雑に扱う子はいません。恐らくですが、子どもたちが名人戦の盤駒を使うより前に、その駒はどのような素材が使用され、職人さんによりどのような工程で製作されたのかについてこと細かに説明し、また対局デモンストレーションという形で大人たちが緊張感を持ってその駒を大切に扱う姿を見せて、駒の価値をちゃんと子どもたちに伝えられているからだと思います。そして、この「価値を伝える」というひと手間が非常に大切なんだと思います。

将棋を好きになるかどうかも分からないのに、いきなりそんな高価な物を買えないという親御さんの意見はごもっともです。なので、まずは子どもたちに将棋を好きになってもらうためにも、高価でなくとも子どもたちにとっていいものを使って感性を豊かにするために、木製のものを選んであげるのもおすすめです。そして、ママやパパ(や将棋の先生)が子どもたちのためになぜその駒を選んだのか、その駒はどんな駒なのかなどをちゃんと伝えてあげることで、子どもはちゃんと大人の気持ちを汲み取ってくれると思います。

そして「この子将棋をしてるととても楽しそうだなぁ」とか「将棋が好きなんだなぁ」と確信が持てたら、良い将棋道具をプレゼントしてあげるのもいいかなと思います。

駒を大切なものだと思える気持ちが持てるようになれば、駒を紛失する確率は格段に減るのではないでしょうか。

5.駒落ちで落とした駒をしっかり管理する

駒袋がないときは駒台にした駒箱の中に落とした駒をしまうようにしましょう。
駒袋がないときは駒台にした駒箱の中に落とした駒をしまうようにしましょう。
駒を落とす上手側が隙間のない駒箱のハコ側を持つなどのルールを作ってみるといいかも
駒を落とす上手側が隙間のない駒箱のハコ側を持つなどのルールを作ってみるといいかも

駒が無くなったり、はたまた、隣の席の駒と混ざってしまったり。これは将棋教室や道場ではあるあるかと思いますが、このようなことが起こりうる多く場合が、駒落ちをしたときです。駒落ちとは、対局者二人に棋力差があるときに、上手側が自分の持ち駒の中から何枚か駒を抜き取ることを言うのですが、どうやら、このときに落とした駒がどこかへ行ってしまうことが多いようです。

駒箱と駒袋がある場合は、落とした駒を駒袋にしまってしまえばいいわけですが、駒袋がない場合は、将棋教室や将棋道場などでは、駒箱をフタとハコの二つに解体し、落とした駒を入れてそれらを裏返して駒台として使うことがよくあります。この時、1点気をつけてほしいのは、落とした駒は必ずハコ側の駒台にしまうことです。フタ側に入れてしまうと、将棋駒のふたのサイドには小さな隙間が空いていることが ほとんどなので、ちょっと手が当たってしまうなど、何かの弾みでその隙間から駒が飛び出してしまうこともあります。

落とした駒をそのまま放置しないということは当たり前なのですが、それに加えて、駒箱を駒台として使う時は、上手側がハコ側を持つようにする、対局が終わった後には必ず駒台の下から落とした駒を取り出し盤上に置くなど、落とした駒をきっちり管理するためのルールがあるといいのかもしれません。

さて、本日は駒を無くさないための工夫について紹介させていただきましたがいかがでしたでしょうか?

まずは子どもたちが将棋の楽しさを覚え、それから道具を大切に思う心を育むことが、駒を無くさないために重要なんだと思います。

駒をお求めの方はこちらから。いつつでは、将棋盤駒で有名な天童市産の将棋駒を一枚単位で取り扱っています。初めの駒として、また、なくしてしまった!という方にもご好評いただいています。

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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