株式会社いつつ

将棋を楽しむ 2017年7月22日

将棋を通して出会えた友だち

荒木 隆

私がこれまで将棋を続けてこれた理由の1つとして将棋を通して出会った友だちの存在が挙げられます。

私にとって将棋を通して出会った友だちは、学校のともだちとはちょっと違った存在であり、親友というよりも「盟友」と表現したほうが良いでしょうか。

将棋じゃなきゃ盟友はできない
将棋じゃなきゃ盟友はできない

私は小学一年生から中学二年生の頃まで将棋教室(道場)に通っていました。ただし、基本的に週に1回のペースです。学校にいる友だちには(ほぼ)毎日会えますが、将棋教室の友だちには頻繁に会うことが出来ません。共に過ごせる時間が少ない分、会えたときには思いっきり遊ぼう!という気持ちが子ども心にもあったように思います。

私が子どもの頃はネットで将棋を指す環境が今ほど充実していなかったので、身近に将棋を指せる相手がいないという実情がありました。なので、将棋教室や道場に通う日は待ち遠しく、そして楽しくて仕方なかったです。おそらく、他の子どもたちもそういった感情を抱いていたのではないかと思います。明るい雰囲気で、なおかつ「将棋」という共通の趣味を持つ子どもどうしが出会えば、互いに仲良くなるのは自明の理ですよね。

しかし、友だちだからといって、いつも楽しい時間ばかり過ごしているのかというと、そうではありません。いざ将棋盤を挟めば、その時は子どもどうしといえども友だちではなくライバルに変わります。

私が将棋教室に通っていた頃、まさにライバルと言えるような存在がいました。彼とは、詰将棋の問題を解きあったり、将棋を指したりするなどして頻繁に競い合う間柄で、互いに切磋琢磨していました。とある夏休みのこと、それまでの将棋の実力は私の方がほんの少し上くらいだったのですが、私が家族旅行に行っている間に見事に逆転されていたのです。とても悔しかったので印象深い思い出ですね(^_^;)

ただ、その出来事があったからこそ、私の中で「もっと将棋が強くなりたい!」という意欲が生まれたのは確かな事実です。ライバルの存在が互いの実力を引き上げる典型的なパターンですね。今となっては、彼に感謝しています。

さて、ここまでは将棋教室や道場で出会う友だちの話をしてきたのですが、今度は将棋大会で出会う友だちについてお話ししたいと思います。

その前に、まずは将棋大会について少しだけ説明しましょう。小学生を対象とした子ども向けの将棋大会の中で最も有名なものといえば小学生将棋名人戦です。小学生将棋名人戦はまず、各都道府県で大会が開催され、各県から代表を1名(地域によっては2名)選びます。その後、関東エリアと関西エリアの2つのブロックに分かれてトーナメント戦を実施し、そこで各ブロックを勝ち残った2名ずつ計4名が、頂上決戦を戦います。今、将棋界で活躍しているプロ棋士の多くは、子どもの頃にこの小学生将棋名人戦に参加した実績を持っています。また頂上決戦はNHK教育テレビで放映されるので、注目度はピカイチです。まさにプロ棋士になるための登竜門ともいうべき大会ですね。

実を申しますと、私も滋賀県の代表としてこの大会に何度か参加したことがあります。これだけ大きな大会となると、たくさんの子どもたちが参加することになるのですが、不思議なことに対戦をしなかった相手とはあまり仲良くはなりませんでした。また、もっと言うならば勝敗があっさり着いてしまった相手ともあまり友情が芽生えません。勝つにしろ負けるにしろ、お互いに「いい対局だったなぁ」と認めあえた時、私たちははじめて「盟友」になれます。

各都道府県の代表が集う全国規模の子ども将棋大会は年に2・3回しかないので、必然的に顔を合わす機会も限られます。特に、私の場合は中学二年生になってから奨励会という道を選んだので、それ以降は将棋大会に参加できなくなり、めっきり盟友たちと会う機会が減ってしまいました。しかしながら、いま私自身が大人になってから久々に彼らにあったりすると、「あの時の◯◯くん」と、お互いの事をちゃんと覚えていてプチ同窓会のような気分になります。会う回数が少なくとも、私たちは対戦したときのことや当時の感情を鮮明に覚えているのです。

私には、滋賀県大会の時にいつも顔を合わせるライバル(先述の彼とは違う人)が一人いました。大会に出るたびに彼のことを意識し、毎回戦うのをとても楽しみにしていました。彼とは本当に仲が良く、今でもたまに飲みに行ったりするのですが、不思議なことに彼とは将棋以外のことでもだいたいウマが合います。(もしかすると、将棋が一番、意見が合わないのかもしれません笑) 改めて、こうして将棋を通して出会った友だちについて考えてみると、彼こそが私の一番の盟友であり、きっと彼も私と同じように思ってくれているんだと思います。

今の時代、スマートフォンやSNSなどが広く普及し、私が子どもの頃と比べると子どもたちの将棋を指す環境が大きく変化しています。今ではネット上で接し合う時間が長い友だちもいることでしょう。

しかし、実際に面と向かって将棋を指すことで生まれる友情は、大人子どもにかかわらずいつの時代でも存在するものではないでしょうか。ネット上でのやりとりでは得られない感情を共有することが、「盟友」という関係に繋がっていくのだと思います。

この記事の執筆者荒木 隆

1990年生まれ。滋賀県大津市出身。平成16年9月森信雄七段門下で「新進棋士奨励会」に6級で入会。三段まで進み、平成28年9月に退会。平成29年3月株式会社いつつに入社。奨励会員時代の将棋教室やイベントで、子どもたちへの指導の経験は豊富。

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