株式会社いつつ

将棋を学ぶ 2017年7月4日

まぎらわしい将棋の言葉たち〜まもると受けると受け止める〜

中倉 彰子

「攻めると責める」「詰みと必至と詰めろと王手」にひき続き、紛らわしい将棋用語シリーズ第3弾として、今回は「まもると受ける、受け止める」についてお話ししたいと思います。

1.まもる

写真①
写真①
写真②
写真②

日本語の「まもる」は、使われるシーンによって様々な意味に変化します。

例えば、「僕が敵から大切な君をまもるよ」なんて甘いフレーズがありますが、それが「僕が敵から大切な玉をまもるよ」になると、前者の「まもる」とはちょっぴりニュアンスが違ってくるのです。

将棋で「まもる」という言葉を使う場合、それは、「相手からの攻撃に対して、予め備える」という意味になります。なので、随分前のいつつブログで登場した囲い(序盤で王様を守るためにつくるお城のようなもの)をつくる動作も、将棋では「まもり」のカテゴリーに分類されるわけですね。

写真1だと、8七のマスについて、相手の駒の利きが1(飛車)であるのに対して、自分の駒の利きは0です。このまま放置しておくと、相手から8六歩と角の頭を攻撃されてしまいます。そこでその攻めを備えるために、写真2のように6九の金を7八に移動します。この1手が、8七のマスを「まもる」ということになります。

「備えあれば憂いなし」。何につけてもそうなのですが、将棋でも「まもる」ことはとっても大切なことです。

2.受ける

写真③
写真③
写真④
写真④

「まもる」に対して「受ける」は、相手が実際にアクションを起こした時にとる行動を指します。

剣を持って襲ってきた敵に対して盾を持って応戦する感じですね。1で出てきた「僕が敵から大切な君をまもるよ」もこちらに近い感じになります。

例えば写真3では、相手の飛車が攻めてきたところです。次に相手に8七歩と打たれてしまうと、8八の角が取られてしまいますね。そこで、写真4のようにこちらが先に持ち駒の歩を8七のマスに打ちます。これが「受ける」1手になります。こうすることで、自分の角は安全な状態になりましたね。

将棋用語としては、「金取りを受ける」「飛車成を受ける」といった使い方をします。

3. 受け止める

写真⑤
写真⑤

「受け止める」は、相手からの攻撃を全て防ぐことを意味します。ちなみに、同義語として「受け切る」ともいいます。

「二枚飛車に追われる夢を見た」という将棋の格言があるのですが、写真5はまさに二枚飛車、とっても危険な状態です。しかし、写真5のように、持ち駒の歩を7九のマスに打てば、二枚の飛車の攻めを防ぐことができ、相手はこれ以上、攻め込むことができません。これが「受け止めた」状態です。

このように、歩のような弱い駒で二枚飛車の強力な攻撃を受け切ることができると、とても感動的です。

実際の対局のときでも相手の攻撃を受け止めることができれば、自分の陣地が非常に安全になるので負けのない状態になります。

さて今回のいつつブログでは、「まもると受ける、受け止める」の違いについてお話ししましたがいかがでしたでようか?

将棋のこのような用語も知っていると、実戦で正しい判断がだんだんとできるようになっていきます。

棋力向上に役立だたせていただければ幸いです。

もし奥深い将棋に触れたくなったら、いつつのオンラインショップ神戸の将棋屋さんいつつまで

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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