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連載:東京新聞「子育て日記」 2016年6月23日

ジジ VS 孫 -プロ女流棋士中倉彰子 子育てブログ

中倉 彰子

年末、久し振りに父が我が家に遊びにきました。母が病気で他界してから8年。その後は一人暮らしで、現在68歳。趣味の株と、時々旅行を楽しんでいるようです。

私「お父さん、シン(5歳)と将棋を指してみてよ。」父「いやー、最近指してないからなぁ。」

父は、将棋が一番の趣味で、新聞や雑誌の将棋欄を切り抜いてファイルしたものが、本棚に溢れています。

棋力はアマチュア三段。以前は毎週のように将棋道場に通っていましたが、目標の四段になるのが難しいと悟り、最近は足が遠のいているようです。

親子で将棋
親子で将棋

昔から、体調が良い時しか道場に行かない等、ちょっと勝負にこだわるところがあり、その辺りはほどほどに、もっと将棋を楽しめばいいのにと思うのですが…。

父とシンが盤を挟むと、お姉ちゃんたちも興味深そうに集まってきます。立って見ようとする子供たち。

父「ほら、ちゃんと座って。」口調はくだけた感じですが、礼儀を教えてくれるのはありがたいです。

さて、対局の方は、駒落ち(上位者の方の駒を減らして、ハンディをつけること)で、1局目は父の勝ち。2局目も父が勝ちそうでしたが、私がアドバイスして、なんとか父の玉を捕まえシンの勝ち。

シンも父も、とても嬉しそう。おじいちゃんと孫が将棋を通して交流する姿に、ほっこり。これが将棋の良いところですよね。

子供の頃、私に将棋を教える時は厳しかった父ですが、この日はとても楽しそうに、孫に将棋を教えています。昔とずいぶん違うぞ!なんて(笑)。

父が帰ったあと、お姉ちゃんたちに、今日の将棋の感想を聞いてみました。

マイ(10歳)「ジジ、手を抜かないなーと思った」
ママ「もし手を抜いていたら、マイもジジと指してた?」マイ「うん。勝てるから。」
マキ(7歳)「ジジが何度も、『シン君、強いなあ』って言ってるのが面白かった。」
ママ「どっちを応援したの?」
マキ「シン。弱い方を応援したの。ガンバレーって。」
ママ「マキは指したくなかったの?」
マキ「うん、負けるから」

二人とも、ジジが自分を勝たせてくれる人かどうか、しっかりと見極めていたようです(笑)。シンはどんどん挑戦するのですが、お姉ちゃんたちはなかなか…。

父も、色々と悩みながら私と妹に将棋を教えていたのかもしれません。「彰子はよく口答えをしてきた」と父は何度も言います。よっぽど印象に残っているようです(笑)。

今度、私の会社のブログで「二人の女流棋士を育てた父」というテーマで、インタビュー記事を掲載する予定です。そちらの方も合わせてお読み頂けると嬉しいです。

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この記事は、東京新聞にて中倉彰子が連載している「子育て日記」と同じ内容のものを掲載しております。
:『東京新聞』2016年1月22日 朝刊

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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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