株式会社いつつ

将棋を教える 将棋を学ぶ 2025年12月17日

将棋初心者が「9級の壁」を超えるための「5つの習慣」

中倉 彰子

将棋のルールを覚え、駒の動かし方も完璧! さあ、いよいよ対局デビュー!

…と意気込んだものの、「なかなか勝てない」「アプリで連敗して子どもが泣いてしまった」「もう将棋やりたくないと言い出した」――。そんな「9級の壁」に悩んでいませんか?

将棋の「9級」と一口に言っても、道場やアプリによって基準は異なりますが、いつつ将棋教室では、ルールを「知っている」段階から、勝つために「使いこなす」段階への最初のステップだと捉えています。

具体的には、以下のようなレベルを目安としています。

  • 駒の動かし方、ルールを完璧に覚えた。
  • 「王手」を見逃さなくなった。
  • うっかり「タダで駒をあげてしまう」ことが減ってきた。

まさに「初心者」を卒業し、対局の勝ち負けを意識し始めるレベルです。ここでつまずくのは、決して才能がないからではありません。誰もが通る道なので、保護者の方は「うちの子は向いてないかも…」と焦らず、長い目で見守ってあげてくださいね。

さて、本記事では、将棋初心者の子どもたちが「9級の壁」を乗り越えるための「5つの習慣」をご紹介していきます。

習慣① 王様を動かし、「囲い」を作る

9級くらいの子どもは「攻め」に夢中になるあまり、自分の王様が最初の位置のまま、守りがおろそかになりがちです。攻めが強い子ほど、相手に攻め込まれた時にあっさり負けてしまうのは、守るための「囲い」を作っていないことが原因かもしれません。

勝つための習慣として「攻める前に囲う」、守りの意識を持つようにしましょう。最初は王様を一つ上に動かすところから頑張ってみてください。実はこれも「中住まい」という囲い方の一つです。

習慣② 1つの戦法を磨き、攻めの得意パターンを持つ

もちろん、将棋で勝つためには「攻め」も重要です。しかし、最初からいろいろな戦法にあれこれ手を出すと、かえって混乱してしまいます。

そこでおすすめなのが、得意な攻め方をひとつ決めて、それを磨くことです。おすすめは「棒銀(ぼうぎん)」です。「棒銀」は、その名の通り「銀」を「棒」のようにまっすぐ進めて、相手の守りを突破するシンプルな戦法です。

この戦法をおすすめする理由は次の3つです。

  • ルールが「銀をまっすぐ進める」と単純で覚えやすい。
  • シンプルなのに、とても強力。
  • 「王様を捕まえる」という将棋の醍醐味を味わいやすい。

「数の攻め」が理解できたら、まずはこの「棒銀」を練習してみましょう。これがマスターできたら、いろいろな囲いとの組み合わせで「棒銀」を使ってみてください。他の戦法はこれらをマスターしたあとに取り組むことをおすすめします。教室でもこの流れで子どもたちに教えています。

習慣③ 1日5分の「詰将棋」タイムをつくる

9級の壁の正体は、多くの場合「うっかりミス」です。その「うっかり」を減らす方法の1つが「詰将棋」です。

「詰将棋」と聞くと、「王様を捕まえるための練習」と思われるかもしれませんが、「相手の玉」を詰ますためだけではなく、「自分の玉」が詰まされないための練習でもあります。

1手詰めや3手詰めの簡単な問題を毎日解いていると、相手を詰ませる「寄せのパターン」を身につけられるだけでなく、「この形は危ない!」「この形だと相手がこの持ち駒を持っていると詰まされてしまう!」という危険察知能力が自然と身につきます。

詰将棋は、1日5分など短い時間でも良いので、感覚を鈍らせないためにコツコツ続けることが重要です。また、難しい問題に挑戦させるより、スラスラ解ける比較的簡単な問題に挑戦させ、「解ける喜び」を優先してあげてください。

習慣④ 「相手は何をしたい?」と視点を変える

攻めることだけに集中してしまい、自分の駒ばかり見て、相手が何をしようとしているかを見ていないことがよくあります。9級の壁を超えるためには、自分の手番が来たとき、指す前に考えるクセをつけることが重要です。

まずは次の3つを考えてみてください。

  • 「相手は、次に何をしたいのかな?」
  • 「自分の王様は、安全かな?」
  • 「タダで取られそうな駒はないかな?」

最初は「考えたけど分からない…。」でも大丈夫です。「相手の視点に立つ」という意識を持つだけで、うっかりミスはかなり減らせます。「自分の攻め」と「相手の狙い」の両方が見えるようになると、将棋は一気に奥深さが増し、さらに楽しくなります。

習慣⑤ 負けた対局を「宝物」にしよう

対局に負けると悔しくて、泣いてしまったり、「もうやらない!」と言ってしまいがちです。しかし、上達のヒントは「勝った対局」よりも「負けた対局」に詰まっています。

負けてそのまま「終わり」にせず、感想戦ができるといいですね。

感想戦とは、対戦相手と一緒にその将棋を振り返り、お互いに感想を言い合うことです。最初のうちは、最初から最後まで並べなくても大丈夫です。投了の少し前に戻って「こう逃げれば詰まなかったね」など、ほんの一言でも立派な感想戦になります。感想戦は、どのレベルの人にとっても上達に欠かせない大切な時間です。

以上、5つを習慣化することで、将棋は今の何倍も、何十倍も楽しくなります。
ぜひ「5つの習慣」を意識し、焦らずに楽しみながら「9級の壁」を乗り越えていってください。

子ども詰将棋 一手詰

いつつ子ども将棋教室で実際に使用している詰将棋本です。

1,100円(税込)

商品番号:161951329

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

関連記事

いつつへのお仕事の依頼やご相談、お問合せなどにつきましては、
こちらからお問い合わせください。

メールでお問い合わせ