株式会社いつつ

将棋を楽しむ 2017年4月25日

ママ女流棋士中倉彰子が実践する、将棋大会のときに子どもの緊張をほぐす5つの工夫

中倉 彰子

子どもたちの将棋に対するモチベーションを維持するためにも、いつつでは、子ども将棋大会に参加することをおすすめしています。なぜなら、子どもに明確な目標ができるということはもとより、普段は一緒に指せないお友達とのネットワークができたり、将棋についてのいろんな情報収集ができたりなど、将棋大会には子どもたちにとって良いことがいっぱいあるからです。

しかしながら、上記のような「子どもにとって良いこと」というのは、あくまで親目線。もちろん、純粋に大会を楽しめるお子さんもたくさんいると思うのですが、人見知りだったりすると、普段慣れない場所で知らない子たちがたくさんいる状況というのは、きっと不安でしかないのではないでしょうか。特に初めて将棋大会に参加する場合だと、緊張のあまり普段通りに指せないということも大いにあり得ますよね。

そこで今回のいつつブログでは、これから子どもたちの将棋大会デビューを控えるママたちに、子どもの緊張を解きほぐすための工夫についていくつかお伝えしたいと思います。

どこまでお役に立てるかわかりませんが、少しでも参考にしていただけると非常に嬉しく思います(^ ^)

特に初めての将棋大会だと緊張しちゃう子どもも少なくありません。
特に初めての将棋大会だと緊張しちゃう子どもも少なくありません。

1.詰将棋本やマグネット式の盤駒などの小道具を持参する

マグネット将棋盤などが、待ち時間に大活躍
マグネット将棋盤などが、待ち時間に大活躍

子ども向けの将棋大会といえども、大きな大会だと1会場あたり、100人近くの子どもたちが参加することもあります。そのため、受付には長蛇の列ができ、並び始めてから受付を済ますまでに相当な時間がかかるということも珍しくありません。

そして、この長い長い待ち時間こそが、将棋大会における、子どもにとっての第1の関門となります。

例えば、テーマパークで絶叫系のアトラクションの順番待ちをしているという状況をイメージしてください。私もそうなのですが、絶叫系のアトラクションが苦手な人にとって、待ち時間というのは、長ければ長いほど、恐怖心を増長させますよね。

そして、実はこれ、あがり症の子どもたちにとっても一緒なんじゃないかと思います。待てば待つほど「もし全部負けたら」とか「変なミスをしたら」など妄想が膨らんでしまい、より一層強い緊張と不安に包まれてしまいますよね。

そこで、私がおすすめしたいのは、こうした待ち時間の長さを、逆に利用して子どもの緊張を和らげる工夫です。

方法は簡単。長い待ち時間の暇つぶしの道具として、携帯に便利な詰将棋の本やマグネット製の盤駒を持ち込むことです。普段から親しんでいる将棋に触れることにより、ちょっとした安心感を得ることができると同時に、また、悪い意味でのまわりへの関心を一時的ではありますが、詰将棋の本や盤駒に逸らしてあげることができます。

ちなみに、この工夫は「私の子どもはそんなにあがり症ではない」という人にもおすすめです。なぜなら、年齢を問わず待ち時間というのはとても気が散りやすいもの。特に小さなお子さんであれば、1度切れてしまった集中力を再び立て直すというのは非常に難しいですよね。そこで子どもの気が散りやすい待ち時間でも、詰将棋や棋譜並べをすることで、ある程度集中力を維持することができます。

2.将棋教室で「大きな相手」との模擬練習をする

大会で大きな相手と当たることを想定して、将棋教室で模擬練習。
大会で大きな相手と当たることを想定して、将棋教室で模擬練習。

子どもが初めて将棋大会に参加するときに、1番不安に感じやすいポイントは「こんな大きな子と指すの?」といったところです。「大きいからといって将棋が強いというわけじゃないよ」「小さくても大人に勝つ子はいっぱいいるよ」という話は日頃から将棋教室などもしてはいるのですが、それでもやっぱり「大きな対戦相手」を実際に目の当たりにすると、子どもたちとしては、少し気がひけてしまうようです。

それでは、「大きな対戦相手」に慣れるためにはどうすれば良いのか。それはもう「大きな対戦相手」に対して免疫をつけるしかありません。

兄弟や親戚、またはご近所さんで子どもの練習相手になってくれる人がいる場合は、その人たちと一緒に指すというのもいいと思うのですが、中には自分のまわりに将棋を指す人がいないというお子さんもいらっしゃるかと思います。

そういったお子さんたちにオススメなのが、1度将棋教室に顔を出してみるということ。将棋教室でも道場と同様、手合いをつけるときには、年齢ではなく棋力によって相手を選びます。道場だと、強い人がいっぱいいそうで少し気後れしてしまいそうですが、将棋教室であれば、割と気軽に足を運ぶことができますよね(^ ^)

無料体験、無料見学などを実施している教室も少なくないので、お子さんが将棋大会デビューする前に、ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか?

3.本番の道具に慣れさせてあげる

大会本番の駒は二文字表記な上に、駒の裏表が識別しにくい
大会本番の駒は二文字表記な上に、駒の裏表が識別しにくい

「弘法筆を選ばず」という言葉がありますが、きっと弘法大師も筆を選ばなくなる前には、色んな筆を使って、それぞれに慣れてきたことかと思います。

普段使っているものと違う道具というのは、想像以上に使いづらいもの。いざ本番でちゃんと自分の将棋が指せるようになるためには、ちゃんと大会で準備される道具に慣れておく必要があります。

それでは、子ども将棋大会で使用される道具とは一体どのようなものでしょうか。

実は将棋大会では、大人であっても子どもであっても、使用される将棋道具に差がありません。つまり、子どもが大人の道具をつかうわけですね。(もちろん例外もありますが)。

色々ある道具の中でも、特に事前に抑えておきたいのが駒の仕様の違いです。具体的には、大会では、二文字駒と言われ、駒の表記が二文字になっているもの、中でも裏面の表記が表と同じ黒色になっているものが使用されます。

将棋を初めるとき、まず最初にするのが、駒の動かし方や基本的なルールなどを「覚える」という作業です。しかしながら、「覚える」の主語が小さなお子さんだった場合、最初からこの二文字駒を使用するのは少しハードルが高いため、子ども向けの将棋教室や、もしくは親御さんでお子さんに購入してあげる際は、できるだけ子どもたちが覚えやすいような工夫が凝らされたものを選ぶことが多いのではないかと思います。例えば、駒の動ける方向に印が付いていたり、親しみやすいようにキャラクターが付いていたり、「玉将」を「玉」など1字表記にしていたり、成ったことが一目で分かるように裏の文字が赤で表記されていたりなどです。

将棋の駒の動きは完璧に覚えている。「成る」「取る」といった基本的なルールもちゃんとできるようになった。なのに本番では、相手の駒が成っていることを見逃してしまったり、なんとなく盤面そのものが見にくくていつものような調子が出なかったというのは、「全ての」とは言わないまでも、こうした二文字駒に子どもが慣れていなかったことが原因としてあげられるのではないでしょうか。

将棋大会に参加すること自体にはそれほで緊張していなかった子どもたちも、使い慣れない道具を前に少し戸惑ってしまい、実際に指していく中で、見落としや見間違いといったことが重なってくると、さすがに悪い意味での緊張が出てくるかもしれません。

最初の段階では「子どもが覚えるため」の駒で全く問題ありませんが、大会に参加するという目標ができた段階で、「大人も使う」一般的な二文字の将棋駒への移行期間を設けてあげるのがいいと思います。

4.大会を特別な日にするための演出をする

子どもの大好きなものを詰め込んだお弁当でやる気アップ
子どもの大好きなものを詰め込んだお弁当でやる気アップ

将棋大会は、子どもたちにとって日頃の努力の成果を披露する特別なイベント。いうならば、運動会のようなものです。

例えば、運動会の日、お母さんが作ってくれるいつもよりちょっと豪華なお弁当、すごく嬉しかったりしませんでしたか?

ちなみに、将棋大会では、運動会の日のように家族みんなでお弁当を食べるというわけではないのですが、それでも、お弁当のおかずに大好物が入っていると、子どもたちの嬉しさは倍増ですよね。

もしかすると、遠方からやってくる場合、凝ったお弁当を作っていると早朝の受付時間に間に合わないということもあるかと思います。こちらは、個人的な意見ですが、そんな時は、「作ったもの」ではなく「買ったもの」でも全然問題ないと思います(^ ^)

私自身、長男の将棋大会に行く時、お弁当を作る時間がなくて、お弁当を買ったことがあるのですが、その時は乗り物好きの長男のために新幹線の形をしたものを選びました。それでも長男はすごくそれ喜んでくれて、大会自体もとても楽しんでいたみたいなので、親としてはしめしめです( ̄▽ ̄)

お弁当以外にも、当日子どものお気に入りの服を着せてあげる、「がんばって」のメッセージが入った手紙をあげるなど、ちょっとした工夫をすることで、子どもたちにとっての将棋大会の日が、特別な1日に変わることと思います。

5.日頃の頑張りを褒めて自信をつけてあげる

日頃の頑張りを褒めることで、対局時の自信に
日頃の頑張りを褒めることで、対局時の自信に

大会で子どもに声をかけるとき、とにかく「応援したい」という気持ちから、ついつい子どもに届けるエールが、「がんばって」のワンパターンになっていたりしませんか。私もついつい我が子のこととなると前のめり、これをやってしまいがちなのですが・・・・(^_^;)

将棋は、口出し厳禁、原則1人で相手に立ち向かわないといけない競技です。常に「がんばって」と言ってくれる存在がいることは、もちろん子どもたちにとってとても心強くて頼もしいのですが、一人で孤独に戦う最中、色んな不安を打ち消す力を発揮してくれるのは「自信」です。

そこで、「がんばって」という言葉と一緒に、例えば「詰将棋あんなにたくさん解いたんから大丈夫」「あの時お友達といっぱい対局したよね」など、子どもたちの自信の根拠となるような日頃の頑張りについて言及してあげるといいと思います。そうすることで、いざ盤面に向かった時に、たとえ相手のお子さんが少し強そうに見えたとしても、負けたらどうしようと不安に襲われても、あんなに詰将棋解いたから、たくさんのお友達といっぱい指したから、「きっと大丈夫!!」って落ち着きを取り戻すことができると思います(^ ^)

さて、今回は、将棋大会のときに子どもの緊張をほぐすために私が実際にしている工夫について書いてみたのですがいかがでしたでしょうか?

ポイントは、子どもの「不安」を少しでも「楽しみ」に変えてあげることなんだと思います。

子どもの不安な気持ちを楽しみに転換してあげることがポイント
子どもの不安な気持ちを楽しみに転換してあげることがポイント

ほんの少しの工夫で、ほんの少しだけでも子どもたちの緊張をほぐすことができれば、子どもは大人よりずっとのめり込む能力に長けているので、その時はきっと普段通り将棋を楽しむことができると思います(^ ^)

いつつでは他にも、子どもの将棋大会についての記事が沢山あります。


この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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