将棋を教える

2016年4月10日

悔しさをバネに〜中倉家対談【後編】

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彰子:将棋をすると小さな挫折を繰り返すから、大きな挫折にへこたれにくくなるって話をよくするんだけど、宏美さんは打たれ強い感はあるね。姉の権力行使にもへこたれず(笑)。

中倉家対談
中倉家対談

中倉宏美女流二段(以下宏美さん):確かにね(笑)。まあそれは置いておいて、将棋で負けても見返してやろうという気持ちは育てられたかもしれないね。将棋では、勝つことでしか見返せないからね。すごく根に持つタイプかもしれない(笑)。

彰子:へー、宏美さんは根に持たないタイプだと思ってた。

宏美さん:いやいや、将棋では大切なことだよね。悔しさをバネにしないといけないし、嫌なことを忘れちゃうとダメだと思うんだよね。

嫌なことを忘れちゃダメだと思う
嫌なことを忘れちゃダメだと思う

彰子:負けて挫折感を感じる人と感じない人は何が違うんだろうね。

宏美さん:子どもでも「負けちゃったー」と軽い感じの子いるし、人によるんだろうね。

:プロはきちんと悔しがるんじゃないの? 特に彰子は対局結果は聞かないでくれとずっと言っていたよね。

宏美さん:私だってそうだよ。お父さんに対しては諦めてたところがあるかもしれないけど。

:宏美は、いいよ聞いてくれてって言ってたじゃないか。

宏美さん:記憶にないなー。強がってただけじゃないかな(笑)。

彰子:でも今は調べたらわかっちゃうもんね。

宏美さん:(対局結果を聞いてその人が)負けていた時、その人のことを考えてるのかな?

:いや、そこまで考えてないよ。

姉妹:爆笑

:だってさ、そこで生きている人間と同じ真剣さは持てないよ。違っていて当たり前なんだよ。そこで生きている人間の挫折感は半端じゃないと思うよ。私は普通の人以上にはわかっているつもりだよ。ふたりを育てたわけだからさ。あー負けた、また明日から頑張ろうって簡単に切り替えられるわけじゃないだろうからね。

彰子:身内だから言われた時に感情的になっちゃうというのはあるよね。悔しさをそのまま出せてしまう。

宏美さん:思いやりを考えようってお姉ちゃんは言ってるよね。

彰子:子どもの中には、負けたくないから友だち同士ではやらない、って子もいるね。先生だと負けてくれるからね。そういう子どもたちにどうやって教えていこうかなという悩みはあるね。

挫折感は扱いが難しい
挫折感は扱いが難しい

彰子:子どもに挫折感を感じさせるのはちょっとかわいそうなところもあるよね。

宏美さん:でも将棋は負けている時が強くなっている時とも言うよね。それをバネにできればいいんじゃないかな。やっぱり悔しいと思わないと次の成長がないからね。

:子どもは負けたら泣くじゃない。大人も本当は泣きたいんだけど、そこに理性があって抑えているだけだよ。

宏美さん:子どもでも、もうダメだと思ったらモードを切り替えてしまって、適当に指して王様どうぞ取ってください、って態度になっちゃう子もいるけどね。

:柔道とかでもそうだろ、テレビで悔しくて泣いているシーンが映るじゃない。悔しさというのは相当なものがあるんだよ。将棋だけじゃなくてね。

:子どもたちをプロにしたいとは思わないのか?

彰子:現時点でそこまでは考えてないな。ただ、将棋を通じていろんなことを学んで欲しいと思って教えてはいるけどね。負けるのはすごく嫌がるし、パパとやると緩めてくれないから勝てなくて、やらなくなっちゃう。そこをどうやって負けても続けていけるかは考えないといけないな。

:そこは数なんだよ。何回も負けていたら気にならなくなるよ。

彰子:私たちも小さいころ、最初は負けてばっかりだったはずだよね。どうしてたのかな?

:将棋はハンデ戦があるだろ。道場では負け続けているとさらにハンデがついたり、もう少し弱い人に当たったりというのがあるから、将棋道場というところは、負け続けることがない仕組みになっているんだよ。

宏美さん:子どもの頃はあんまり負けた記憶がないんだよねー、私。

彰子:あ、そう?

:それは悔しさがなかったんじゃないの。

宏美さん:初段くらいまではとんとん拍子で(笑)。プロになってからは研究会とかでも負けまくるわけで、印象は強いかな。

彰子:へー、それはすごいね(笑)。

宏美さん:負けて悔しいと思うのは大人になってからだけどね。

彰子:教え方がうまかったのかな。

:今でも私は正しいことをしたのか、よくわからないんだけどね。

彰子:それが結論ということで(笑)。

家族で1枚
家族で1枚

この記事の執筆者中倉 彰子

株式会社いつつ代表取締役、女流棋士。女流アマ名人戦連覇後、94年高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。プロとして公式戦を戦うだけでなく、NHK杯将棋トーナメントなどテレビ番組の司会や聞き手、イベント司会などでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、育児と仕事の両立に奮起。2007年日本女子プロ将棋協会設立に参画。事業部長として、地域や子どもたちに長く親しまれるイベント作りを心がけている。子育てエッセーを地方紙7新聞に連載し、近年は将棋と知育・育児を結びつけるような活動を広く展開。2015年10月株式会社いつつを設立、代表取締役に就任。女流二段。法政大学人間環境学部卒。@AKIKOPDG

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