株式会社いつつ

将棋を学ぶ 2017年5月8日

これだけは覚えておきたい将棋のお作法

中倉 彰子

先日、いつつブログで中倉彰子が答える“将棋道場デビュー前に知りたいこと5つという記事を投稿したのですが、「初心者でも大丈夫ですか?」という質問に対して「基本的な礼儀作法と将棋のルールが分かっていれば参加可能です」とお答えしたところ、さらに「基本的な礼儀作法がわかりません」との反応をいただきました。

そこで、今回は、将棋における礼儀作法について、誰かと指すときに、「これだけは押さえておきたい!」というお作法についてお話ししたいと思います。

1.負けましたをちゃんと言う

将棋は礼に始まり礼に終わる競技です。
将棋は礼に始まり礼に終わる競技です。

将棋は、礼に始まり礼に終わる、というお話しは、いつつブログの中でも、口酸っぱくなるくらい何度も何度もお話ししていますよね。対局を始める前の「お願いします」、負けた時の「負けました」、対局を終えた後の「ありがとうございました」。この3つの礼は、たとえ初心者であっても必ずきちんとできるようにしておきましょう。特に「負けました」は、将棋独特の習慣で、日頃あまり使う機会もないため、子どもたちにとっては少しいいづらいかもしれません。しかし、将棋はどちらかが「負けました」と言わないと対局が終わりません。将棋を指す上でも、どんどん強くなるためにも大切な言葉なのです。

2.「ながら」将棋をしない

対局中は盤面に集中しましょう
対局中は盤面に集中しましょう

例えば友達とお話しをしながら、お菓子を食べながら(水分補給はOKです)、スマホを触りながら将棋を指すのはマナー違反です。

と、ここまでは将棋に限らず割と普通の話なのですが、案外見落としがちなのは、「相談しながら」も厳禁だということ。特に将棋教室などであれば、分からない局面が出たらその場で先生に聞くこともあるかもしれませんし、指導者側も対局の途中でヒントを出してあげることもあるかと思います。しかし、道場などで将棋を指す場合、口を開くのは一局全てが終わった後、「感想戦」とよばれる対局のフィードバックのような時間の時です。

もちろん、対局をしている2人以外の人が横から口を挟む「助言」も厳禁です。「あ〜もっとこうすればいいのに」など、アドバイスしたくなる時もあるかもしれませんが、そこはぐっとこらえましょう。

3.駒を指すときはきちんと盤のマス目の中に入れる

駒はマス目にきっちり入れましょう
駒はマス目にきっちり入れましょう

今の時代、スマホのアプリなどではコンピューターが、選んだ駒を選んだ場所に自動的に配置してくれるので、「駒をマス目にきちんと入れる」という基本的なことを意識する機会が少なくなっているのですが、実は「駒をマス目にきちんと入れる」ことにもちゃんと意味があります。それは、どの場所にどの駒があるのかを、きちんと相手に示すことです。さすがに、「駒の向きがおかしい」なんてことはないと思うのですが、マス目の線の上に駒がかかっているだけでも、完全情報公開、両者がフェアであることに重きを置く将棋では良いマナーとは言えません。

また、いったん、きちんとマス目に駒を置いたとしても、袖などがあたってしまい駒の位置がずれるということもありえます。相手に一定以上の棋力があれば、駒がずれる前の局面の配置を覚えているので、元の状態に戻すことも可能ですが、初心者の特に子どもたちどうしの場合はこうもいかないですよね。ですので、誰かと対局を行う際は、駒を指すことに慣れるまで、必ず1手1手十分気をつけるようにしましょう。

4.「待った」はなし

駒から手を離した瞬間、1手指したことになります。
駒から手を離した瞬間、1手指したことになります。

将棋でいう「待ったなし」とは、一度指した手をやり直してはいけません、ということを意味します。そして、ここでいう「一度指した手」というのは、1つの駒をつかみ、その駒から手を離すまでの一連の動作を指します。なので、1度触った駒を戻して別の駒を掴んだり、1度駒を置いた場所から別の場所に移動させるというのもアウトです。

家族や友達などと趣味の一環で将棋をする場合や、アプリなどゲームの時にそこまで厳密にする必要は決してないのですが、道場や大会など比較的正式な対局の場では、必ず1度しっかり熟考した上で駒を選び、そして置くようにしましょう。仮に駒から手を離した瞬間に「あ、間違っている」と気づいたとしても、指し直したい気持ちはぐっとこらえて次のチャンスを我慢強く待つしかありません。ちなみに、対局中の揉め事として意外に多いのが、駒が指から離れたかどうかの「はなれた」「はなしてない」の論争ですね。

5.駒を数えてしまう

歩は、3枚1組6つのグループに分けてあげると数えやすいです。
歩は、3枚1組6つのグループに分けてあげると数えやすいです。

道場や教室などによっては、駒を全て盤の上に並べた状態で帰るというところもありますが、駒をしまう必要がある場合は、必ず駒が全て足りているのか、数を確認してからしまうようにしましょう。将棋というのは、1枚でも駒が無くなるとできなくなってしまいます。次に使う人が困らないよう駒をちゃんと揃った状態にしておくのがマナーですね。

数え方としては、玉(王)将2枚→飛車角各2枚→金銀桂香各4枚→歩兵18枚と駒の価値が大きい順から数が揃っているのか確認してしまう方法が一般的です。特に数の多い歩兵は3枚1組のグループを6つ作ると分かりやすいですよ。ちなみに、プロ棋士はみんな将棋の道具を大切に扱います。そして、この駒を数えてしまうということもまた道具を大切にすることの一環なのではないでしょうか。

さて今回は将棋における、ここだけは押さえておきたい!というお作法についていくつかご紹介させていただきましたがいかがでしたでしょうか?

2番や3番は、もしかすると慣れてないと難しいかもしれませんが、意識するだけでもだいぶ違ってくるとおもいます(^ ^)

礼儀作法とは、お互いに気持ちよく将棋を指すためのルール。道場や教室をはじめ、盤を挟んで誰かと将棋を指すときには、きちんとルールを守って、勝っても負けても、互いに納得ができるような姿勢で臨むようにしましょう。

将棋を通じて子どもたちに礼儀作法を身に付けてほしいという場合は、やはり将棋教室に通うのが1番です。

いつつ将棋教室でも、将棋の強さだけではなく、礼儀作法やマナーを重んじた指導を心がけています。

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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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