株式会社いつつ

将棋を楽しむ 2018年12月21日

黒田官兵衛ゆかりの地に広がる圧巻の景色〜人間将棋姫路の陣〜

金本 奈絵

晴天に向かってそびえ立つ真っ白な城郭の麓で、我が陣地を守らんと自分の持ち場でどっしり構える甲冑を着た40人の鎧武者たち。今年で第4回を迎える人間将棋姫路の陣は、今や全国各地で開催される人間将棋の中でも屈指の迫力ある情景を誇ります。

今回のいつつブログでは、そんな姫路市での人間将棋の取り組みについて、姫路市観光交流局の藤原正俊さん(以下藤原さん)と梶井貴博さん(以下梶井さん)に詳しくお話を伺いました。

姫路市のシンボル姫路城
姫路市のシンボル姫路城

姫路城をバックに迫力ある人間将棋

今年も11月10日・11日と2日にわたって人間将棋姫路の陣が開催されていましたね。どれくらいの方が来場されたのでしょうか?

藤原さん:姫路城の見学の方も含みますが今年は初日が約6000名、2日目が約8000名、のべ14000人もの方にご来場いただきました。

大盛況ですね。毎年これだけの方が来場されるのでしょうか?

藤原さん:第1回目が2日合わせて約6000人の来場だったのですが、お陰様で、年々たくさんの方にご来場いただいています。元々は姫路城を眺望する大手前公園の広場で開催していたのですが、第2回開催以降、もっと皆さまに姫路城の迫力ある光景を見てもらいたいとの思いから会場を三の丸広場へと移しました。イベント当日は、たまたま姫路城を訪れた外国人観光客も、「これはなんだ?」という感じで足を止めてくれます。

2018年人間将棋姫路の陣(写真提供:姫路市)
2018年人間将棋姫路の陣(写真提供:姫路市)

確かに、威風堂々たる姫路城の真下で本格的な甲冑を着て行われる真剣勝負。想像しただけで圧巻の光景です。ただ、山形県天童市のように元々将棋にゆかりがあるわけでは無かった姫路市でなぜ人間将棋が行われるようになったのでしょうか?

藤原さんきっかけは、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」で姫路が舞台となったことです。官兵衛の「人は殺さず活かすべき」という哲学が持ち駒再利用のルールと相通じるものがあるのではという発想が元になっています。また、人間将棋は元々、官兵衛が仕えていた太閤秀吉が伏見城で行ったエピソードでもあることから、官兵衛ゆかりのこの姫路でも人間将棋のイベントをという運びになりました。

姫路城下で本格的な甲冑を着て繰り広げられる人間将棋は、官兵衛が活躍していた当時さながら(写真提供:姫路市)
姫路城下で本格的な甲冑を着て繰り広げられる人間将棋は、官兵衛が活躍していた当時さながら(写真提供:姫路市)

継続のために大切なこと

人間将棋姫路の陣で将棋の駒となるのは地元の中学生たちだと伺っています。今の時代に甲冑を着て官兵衛が活躍した時代の武士になるというのはとても貴重な経験になるのではないでしょうか。元々、観光の起爆剤としての役割を担った人間将棋のイベントということでしたが、何か変化はありましたか?

梶井さん:例えば昨年は第二期電王戦の第二局、佐藤天彦名人とPonanzaの対局が姫路城のチの櫓で開催されました。姫路駅近くに設けられた大盤解説会場は、立ち見が出るほどの大盛況でした。また、今年は人間将棋姫路の陣と同日開催で全国将棋サミットも開催し、将棋によるまちづくりを行う天童市や倉敷市など、全国各地の自治体が集まって活動発表や交流を行いました。他にも、人間将棋姫路の陣のイベントでプロ棋士による指導対局を行うのですが、その応募者が姫路市近隣だけではなく全国から集まるようになり、今年の当選者には札幌の方もおられました。

このようなことから、人間将棋のイベントがちゃんと観光資源としての機能を果たしてくれているんだなぁと実感します

将棋のまちとしてのイメージが着実に全国に浸透しているといえますね。ただ、ここまで認知度が上がってくると、毎年様々なイベント企画を練らないといけなくて大変ではないですか?

梶井さん確かに、毎年全く同じものだと飽きられてしまうので、何度きても楽しんでいただけるよう工夫は凝らします。例えば、詰将棋クイズを出題したり、昨年のゲスト対局ではPonanzaの開発者の方にきていただいたりしています。ただ、将棋による町おこしを継続的に行なっていくためには、ユニークなイベント企画も大切なのですが、何より、将棋のファンを育てることが大切だと考えています。ですので、人間将棋姫路の陣では、子ども将棋教室や子どもの将棋大会を開催するなど、若い世代に対する将棋の普及という観点も大切にしています

人間将棋以外にも工夫を凝らした様々なイベントがあるが、大切なことは将棋普及(写真提供:姫路市)
人間将棋以外にも工夫を凝らした様々なイベントがあるが、大切なことは将棋普及(写真提供:姫路市)

編集後記

ついこの間まで、将棋教室らしい将棋教室がなかったという姫路駅前に、つい最近新しい将棋教室ができたそうです。人間将棋が直接影響しているわけではないそうですが、将棋とほとんど縁もゆかりもなかった姫路市でこうした動きがあるのはとても喜ばしいことですね。

今回のインタビューで印象的だったのは、人間将棋のイベントを継続的なものするために、子どもたちの将棋普及にも注力しているというお話です。イベントというとその時だけ盛り上がるような一過性のイメージが強かったのですが、足元の地盤がしっかりしているからこそ色んな工夫ができ、一過性のものから長く愛されるものへと変わっていくのですね。

縁起のいいジンクスがたくさんある姫路の人間将棋(写真提供:姫路市)
縁起のいいジンクスがたくさんある姫路の人間将棋(写真提供:姫路市)

ここからは余談になりますが、「人間将棋 姫路の陣」には2つのジンクスがあるようです。「イベント当日に雨が降らない」と「イベントに参加した棋士はいい成績をおさめる」です(もちろん、雨天時の会場も用意しているそうですが)。今年はもう終わってしまいましたが、ぜひ皆さんも来年の人間将棋姫路の陣に参加して、縁起のいいジンクスにあやかってみませんか(^ ^)

姫路市の他にも、日本には将棋のまちがたくさんあります。


この記事の執筆者金本 奈絵

株式会社いつつ広報宣伝部所属。住宅系専門紙の編集記者を経て現在に至る。

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