株式会社いつつ

将棋を学ぶ 2019年1月25日

子どもが将棋教室に通うママさんたちからの質問に女流棋士中倉彰子がお答えします

中倉 彰子

いつつ将棋教室を始めてからかれこれ約1年半経ちますが、教室やイベントなどを通じて、子どもを将棋教室に通わせているというお母さんから様々なご質問をいただくようになりました。そこで今回のいつつブログでは、Q&A方式で、わたくし中倉彰子が、実際にあったママさんたちからの質問にお答えしたいと思います。

Q 家での将棋の勉強方法がわかりません。

もともと、学童で覚えてきたことがきっかけで将棋を始めました。本人がとても楽しんでいるということもあり、家でも何かサポートしてあげることができればと思うのですが、家族内に将棋に詳しい者がおらず困っています。将棋の家庭学習はどのようにすればいいでしょうか。

回答

家庭学習でも詰将棋・実戦・棋譜並べの練習を
家庭学習では詰将棋・実戦を中心に

「詰将棋・実戦・棋譜並べ」とは昔からよくいわれる将棋勉強法の3つですが、「棋譜並べ」はある程度棋力が必要なので、ここでは、詰将棋と実戦についてお話します。

まず詰将棋についてですが、アプリなどもありますがご家庭では書籍でとり組むのが一般的かと思います。詰将棋は1手詰めから始まり、棋力が上がるごとに3手5手とだんだん手数の多いものへとステップアップしていくのですが、今将棋教室で何手詰を解いているのか確認することで、お子さんのレベルにあった詰将棋の書籍を選ぶことができます。ちなみに、お子さんが詰将棋をはじめたばかりという場合は、いつつの「ほんとうにはじめてのつめしょうぎ」がおすすめです。こちらは、1手詰めの問題の中でも基礎となるものを集めているので、詰将棋の導入にピッタリです。

次に実戦の家庭学習についてですが、将棋アプリやコンピュータ将棋などオンライン将棋に頼ったり、手筋や戦法についての書籍を読むことで、実戦に役立つような知識を身に付けるという方法が挙げられます。

オンライン将棋については、後ほど詳しく説明するとして、手筋や戦法の書籍については、どの本が子どもたちいとっていいのか判断できないというお母さんもたくさんいるのではないでしょうか?そこで、過去のいつつブログの中から、将棋初心者におすすめの将棋書籍についてまとめた記事を貼っておくので、ぜひそちらをご覧になってみてください。

最後に、将棋の棋力が少しついてきたかな、というお子さんには、棋譜並べを取り入れると良いと思います。実戦や詰将棋と違って誰かに勝ったり、問題が解けたりといった達成感がないのですが、子どもたちのやる気と工夫次第で続けることができるかもしれません。もし子どもたちから、棋譜並べをしたいという声があれば、棋譜並べを楽しくする工夫について下記ブログ記事にまとめていますのでぜひ参考にしてください。

上記の3つ以外にも、例えば新聞にある将棋の記事を読んだり、将棋番組を見るといったことも家庭でできる将棋学習の一部だと思います。

ちなみに、いつつ将棋教室では、日々の将棋の家庭学習について「将棋ノート」をつけているお子さんもいます。記録をつける、というのも良い方法だと思っています。今日は何をやったのかなぁとノートを見てあげることも、将棋の家庭学習にいてお母さんができるサポートなのかなぁと思います。

Q 家でアプリばかりやってきりがありません。

子どもが将棋アプリに熱中しすぎてしまいます。学校の宿題も疎かになるので、将棋アプリは禁止にしました。

回答

オンライン将棋をするときはルールを決めて
オンライン将棋をするときはルールを決めて

PCやスマートフォンなど、オンラインでの将棋が当たり前になった昨今といえども、子どもたちに、それらの環境を与えるというのは、親としてはとても心配ですよね。ご相談いただいているように熱中しすぎて学校の宿題が疎かになってしまったり、視力が落ちるなどよくない影響を及ぼすのではないかと懸念する気持ちは、同じ母としても私にもよく分かります。

ただ、その一方でオンラインの将棋には、オフラインにはない良さがあるというのも事実です。例えば、将棋をはじめたばかりの初心者のお子さんが、自分の将棋を1から振り返るというのはとてもハードルが高いですが、オンラインであれば棋譜という形で指した手順を記録しておくことができるし、実戦の場数を踏むうえではずっと効率的です。

確かに、無条件に子どもたちにオンライン将棋に触れさせてしまうと、上記のような心配もありますが、棋力の向上を目指すのであれば、オンラインの将棋を全面的に禁止してしまうよりも、「1日対局は1回まで」「必ず挨拶する」などルール決めて、上手く付き合う方法を模索してみるのもいいのかなぁと思います。

ちなみに、いつつの将棋教室でも、棋譜を残すために将棋アプリを使った対局をしたり、オンライン将棋を使って、東京と神戸の生徒で対戦したりしています。

オンライン将棋との上手な付き合い方については下記にまとめているので、ぜひ参考にしてください。


Q 他のお友達になかなか勝てず、本人はもちろん親としても悲しいです。

将棋教室に入会以来、子どもが他のお友だちに全然勝てないようでとても落ち込んでいます。親としてもそんな子どもの姿を見ているのが辛いです。

回答

負けを乗り越えて、子どもたちは着実に強くなっていきます。
負けを乗り越えて、子どもたちは着実に強くなっていきます。

将棋は実戦の数がものをいう競技、実は将棋教室に入会したときに他のお子さんになかなか勝てないというのはよくある話です。あの、羽生さんでさえ、将棋道場にはじめて行ったときは全然勝てなかったそうです。

ただ、将棋は負けるとすごく悔しいもの。それゆえに、子どもの落ち込み方や悲しみもひと潮で、ましてやなかなか勝つことができず、ずっとその悔しい状態から抜け出せないというのは、とても切ない気持ちになってしまいますよね。

子どもの棋力の伸び方には個人差がありますが、例えば前回できていなかったことが、今回できるようになっているなど回を重ねるごとに確実に成長しているので、将棋で負けることも含めて温かく見守ってあげてください。相手あってのことなので将棋で勝たせてあげるということは難しいですが、負けた悔しさや悲しさを和らげるような工夫はたくさんあると思います。

Q子どもがなかなか昇級できません。

子どもが将棋教室に入会して以来、ほとんど昇級していません。昇級の決定はどのような判断基準で行われ、通常どのようなペースで昇級して行くものなのでしょうか。

回答

昇級規定は講師にとても悩ましいポイント
昇級規定は講師にとても悩ましいポイント

昇級規定については、講師にとっても正直悩ましいポイントです。どんどん昇級させてあげた方が、子どもたちのモチベーションを維持する上ではいいのかもしれませんが、他の将棋教室とあまりにも乖離があると、大会などに参加したときに、結局子どもたちに辛い思いをさせてしまうことになりかねません。ですので、昇級規定については、将棋教室によって、様々な工夫をしています。

例えば、いつつでは13級からなのですが、20級や30級から作って昇級規定を細かく設定している教室もあれば、降級システムがある教室もあります。また、いつつでは現状、対局態度と詰将棋の進捗、そして講師との指導対局の内容をで昇級の判断をしているのですが、レッスンの参加回数やお友達との対戦成績を加味する教室もあります。


昇級のペースについては、もちろん将棋教室の昇級規定により左右されますが、他にも、お子さんのタイミングがあるかと思います。最初の方で苦労しても、その後ポンポンと昇級するケースもあれば、コンスタントに昇級していく子もいます。まれに将棋をはじめてから1年で初段になったというお話も聞きますが、それは稀なケースで、現在神戸元町教室の講師を務める荒木も8枚落ちを卒業するのに半年かかったそうですし、初段になるまで10年かかったとおっしゃる将棋教室の先生もいらっしゃいました。

ですので、なかなか昇級できないことに対して、お子さん自身も親御さんも歯がゆい思いをすることがあるかもしれませんが、「将棋が嫌いになってしまった!」ということでない限りは、根気強くがんばってみるのがいいかと思います。

Q将棋教室での成長の道筋が分かりません

私はあまり将棋に詳しくないのですが、子どもは将棋教室ではどのように成長していくのでしょうか?

回答

将棋をはじめたら、ぜひ初段を目指してほしい
将棋をはじめたら、ぜひ初段を目指してほしい

将棋に詳しくないお母さんだと、確かに将棋教室のシステムってよく分からないですよね。将棋教室にもよりますが、大体が入会と同時に級位を与えられ、13級(何級から始まるかは将棋教室次第)→12級・・・1級と昇級しそこから初段→二段・・・と段位に移って行きます。

プロ棋士になりたいとか、将棋は趣味程度でなど、お子さんによって目的は様々だと思うのですが、個人的には、将棋教室に入会したからには、子どもたちに初段を目指してほしいと考えています。

さて、今回は子どもたちを将棋教室に通わせているというお母さんたちからいただいた質問に答えてみました。どこまで、お役に立てたかは分からないのですが、もし今お子さんの将棋についてお悩みがあるということでしたら、お気軽にご相談ください。

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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