株式会社いつつ

将棋を教える 2018年7月13日

子どもが自分の成長を実感するためにできること

中倉 彰子

将棋を始めた子どもたちには、ぜひ大人になるまでずっと将棋を続けてもらいたいのですが、いかんせん将棋は一朝一夕で上達するものではありません。自分の思い通りに上達できなかったり、なかなか勝てないことが続くと興味を失い、そして最終的にはやらなくなってしまいますよね。

ですので、将棋を始めた子どもたちにモチベーションを保ちながら将棋を続けてもらうには、子どもたち自身が「ちゃんと上達しているな」「ちゃんと成長しているな」と実感することが大切です。

そこで今回のいつつブログでは、私が日頃将棋教室で実践している、子どもたち自身が自分の上達を実感できるための工夫についてまとめてみました。どれもほんのちょっとしたことですので、最近子どもたちの将棋に対するモチベーションが落ちてきたなぁということがあれば、参考にしていただけると嬉しいです。

毎月の目標を掲げる

いつつ将棋教室の東京府中校では、毎月子どもたちにその月の自分の目標を掲げてもらうようにしています。例えば「今月は●級に昇級する」とか「何回勝つ」とか(中には静かにするなんて子もいますが)、色んな目標が出てくるのですが、大切なのは、その目標をちゃんと自分で紙に書いてもらい、子どもたちがいつでもそれを確認できるように、教室の壁に掲示しておくということです。

例えば、子どもたちが目の前にある対局について集中力が切れかけた時、ふと壁を見やった時に「今月は10級に昇級する」と自分で掲げた目標が目に入って来たら、「そうだ、今月は10級に昇格するんだった!よし、気を引き締めてがんばるぞ!」となりますよね。もし今月の目標が背中側など子どもたちから見えない場所にあるなら、「今月の目標はなんだったっけ?思い出してごらん」と声をかけてあげるのもいいと思います。

自分が立てた目標をちゃんと達成できれば、子どもたちも成長を実感できますよね。

自分で立てた目標が達成できると嬉しい。
自分で立てた目標が達成できると嬉しい。

詰将棋はタイムトライアルで

反復練習というのは、将棋においてもとても大切な練習法です。例えば詰め将棋の問題であっても、一度解いたらそれでおしまいというのではなく、特にすぐに答えが分からなかった問題についてはもう一度取り組むことで、1つの知識として確実に定着させて行くことができます。また、不思議なことに、詰将棋は何度トライしても毎回同じところで躓きます。この躓きを繰り返すことで自分の苦手ポイントが明確になるというのもいいですよね。

ただ、詰将棋に取り組む子どもたちにとっては、2回目の「解けた!」の感触は、最初に取り組んだ「解けた!」に比べて達成感が半減してしまいます。確かに、一度解いた問題をもう一度解けたとしても、それは成長ではなく確認にすぎません。

そこで、登場するのがタイムトライアルです。ただ解くだけだった詰将棋に時間という概念を入れることで、単なる確認を「前よりも早く解けた!」という成長に結びつけることができます。少し手間はかかるかもしれませんが、詰将棋を解くときは答えやその正誤だけでなく、何分かかったかというタイムを記録として残してあげるといいかと思います。

詰将棋の反復練習にはタイムトライアルを導入
詰将棋の反復練習にはタイムトライアルを導入

また、いつつの将棋教室では、詰将棋のプリントを解くときは、詰将棋マラソンと称して、全部解けたプリントのナンバーのところにスタンプを押してあげるようにしています。こうすることで子どもたちは自分がどれだけ進んだのかを一覧にして把握することができます。そして、空いてるマスがあるとコンプリートしたくなるのが子どもたちの性分(大人もですかね、笑)。「次は●番やる!」と俄然やる気を出してくれます。

詰将棋マラソンで自分がどれだけ進んだか一目瞭然
詰将棋マラソンで自分がどれだけ進んだか一目瞭然

指導レポートをわたす

いつつ将棋教室では、月に1回、対局の勝敗や良かった点、アドバイスなど、一人ひとりの指導対局の内容をレポートとしてまとめたものを子どもたちにわたすようにしています。もともと親御さん向けに作成しているものなのですが、「先月の成績だよ〜。お母さんにちゃんと渡してね〜」とレポートを渡すと、いつも子どもたち自身も興味津々にそのレポートを眺めています。なんだか、学校の通知表みたいな感じでドキドキするのかなぁと思います。

また、レポートを作成するときに私が心がけていることの1つとして、アドバイスや良かった点について、必ず前回と比較してどうだったかという視点で書くように意識しているということが挙げられます。将棋をしていて子どもたちが自分の成長を実感するのは、きっと昇級も含めて、対局で勝ったときくらいだと思うのですが、私は、このレポートを通じて、子どもたちが自分でも気づいていない成長のポイントをちゃんと伝えてあげたいなぁと思っています。

案外気になる自分の成長記録
案外気になる自分の成長記録

ポイントカード

子どもたちはポイントを集めるのがお好き
子どもたちはポイントを集めるのがお好き

過去のいつつブログでも少し紹介させていただいたことがあるのですが、いつつ将棋教室では、ポイント制というものがあります。ポイントは、毎回の出席や、対局カード、対局数など、対局の成績以外で子どもたちががんばったという点に対してあげるようにしているのですが、大切なのは、このポイントを「●●くん1ポイント!」と口頭で伝えるのではなく、ちゃんとポイントカードという形にして、子どもたち自身が、自分が今何ポイントなのか、把握できるようにしてあげることです。先ほどの詰将棋マラソンにも似ているのですが、自分が頑張ったことをちゃんと目に見える形にしてあげることで、子どもたちの頑張ることに対するモチベーションが上がります。

ちなみに、このポイント制のすごいところは、子どもたちの「やる気スイッチ」だけではなく「ちゃんとしなきゃスイッチ」も入れることができる点です。例えば私は対局中に子どもたちが騒がしかったりするとイエローカードを出すのですが、「イエローカードでポイント一つ消滅!」という脅し文句が子どもたちには結構通用します、笑

昇級の時はみんなの前で

いつつ将棋教室で昇級する子どもたちがいるときは、必ずレッスンの最後に、みんなの前で「●●ちゃんが●級になりました」と発表するようにしています。そして、将棋教室のお友だちみんなでパチパチっと盛大な拍手を送るようにしています。

昇級が嬉しいことだというのは既にみんな知っていることですが、こうしてみんなに祝ってもらえると、嬉しさも、昇級したんだという実感も倍増しますよね。

そして、いつつ教室には「昇級マラソン」というものがあります。これは将棋のイラストが書いてある30枚のシートでまとまっているものなのですが、これを各クラスの昇級者が昇級した際、めくります。最後の30まで行くと、全クラスの生徒が皆で1ポイント押すことができます。

さて今回は、子どもが将棋を続けるために、子どもたち自身に成長を実感してもらうための将棋教室ができるちょっとした工夫についてご紹介させていただきましたがいかがでしたでしょうか?将棋の上達というものはなかなか目に見えるものではないのですが、続けてやることで、確実に前進しているはずです。大切なのは、たとえその前進がほんの少しだったとしても、ちゃんと子どもたちの目に見える形、体感できる形にして、子どもたちに「成長しているなぁ〜」と実感してもらうことだと思います( ´∀`)

いつつのオンラインショップ神戸の将棋屋さんいつつでは、はじめて将棋に触れる子どもたちが楽しく将棋を続けるための初心者向け将棋テキストがたくさんあります。

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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