株式会社いつつ

将棋を教える 将棋を学ぶ 2017年7月19日

9×9の将棋盤に慣れるためのコツと練習法

中倉 彰子

標準規格の将棋盤、タテ一尺二寸(約36.4cm)×ヨコ一尺一寸(33.3cm)というのは、将棋初心者の子どもたちにとって、少々使いにくいのかもしれません。そもそもサイズが大きいということもあるのかもしれませんが、何より、タテ×ヨコ81のマス目のいたるところに、全8種類(成り駒を含めると全14種類)の駒40枚(駒台にある者も含めて)が散らばっていると、次にどの駒を動かすべきなのかということはもとより、盤面のどこを見ればいいのかということさえイマイチよく分からなくなっちゃいますよね(^_^;)

とはいえ、将棋大会や将棋教室で使われるのは9×9の将棋盤。将棋を本格的に楽しもうと思うと、9×9の将棋盤を避けて通ることはできないのです。そこで今回のいつつブログでは、将棋初心者の子どもたちが9×9の将棋盤に慣れるためのちょっとしたコツや、練習法についてお話ししてみたいと思います( ´ ▽ ` )ノ

9×9の将棋盤は将棋初心者の子どもたちには少し使いづらい!?
9×9の将棋盤は将棋初心者の子どもたちには少し使いづらい!?

1.駒と駒がぶつかっている場所を探す

9×9の将棋盤の1部分にフォーカスを当てる場合は、駒と駒がぶつかっている場所を探してみて。
9×9の将棋盤の1部分にフォーカスを当てる場合は、駒と駒がぶつかっている場所を探してみて。

9×9の将棋盤が子どもたちに「分かりにくい」と言われる原因は、冒頭でも述べたように、盤面のどこに注目すればいいのか分からないというところにあります。カメラでも焦点が合わないまま撮影するとピンボケの写真になってしまうように、将棋でも焦点が合わないまま指してしまうと、的外れな1手になってしまいます。

そこで、9×9の将棋盤の一体どこにフォーカスを当てるといいのかというと、将棋初心者のうちは、まず、「自分の駒と相手の駒がぶつかる場所」を探してください。将棋において「駒と駒がぶつかる場所」というのは、すなわち「戦いが起きる場所」になります。将棋に限った話ではありませんが、戦いが起きそうなのをそのまま放置しておくと、いずれ何かしらの問題が起きますよね。将棋の場合は、相手の攻めに自陣が突破されたりしちゃうわけです(;_;)

そうならないためにも、「駒と駒がぶつかる場所」があれば、例えば相手の駒を取ったり、自分の駒を守るなどして、何かしら対処する必要があるというわけですね。

また、子どもたちが対局に慣れてくると、飛車や角といった大駒に注意が必要です。将棋初心者の子どもたちが、対局の中で特に見落としがちなのが、大駒の遠くから効きです。特に角の斜めの効きは、私が将棋教室で教えていても、気づかないということはよくあります。「あー!」とうっかりして角や飛車で玉を取られてしまった!ということは頻繁におこります。相手が角や飛車を動かしたら、要注意です!
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相手や自分の飛車先、遠くからの角の効き、そして自陣の玉のまわりをチェックすることで、「今が攻めるチャンス!」「今は守り時」などを判断する材料になります。

2.四隅の香を見よ

9×9の将棋盤を俯瞰して見るときは、四隅の香をチェック。
9×9の将棋盤を俯瞰して見るときは、四隅の香をチェック。

1番では、将棋盤における1部分を集中的に見るためのコツについてお話ししましたが、将棋で上達するには、「将棋盤の1部分を集中して見る眼」と同時に、「将棋盤全体を俯瞰して見る眼」が必要になります。

「81マスもある将棋盤の全体を把握するなんて無理!」そう思われる方もいるかもしれませんが、「将棋盤の1部分を集中して見るコツ」があるように、「将棋盤全体を見るためのコツ」というものも存在します。

「四隅の香を見よ」というのは将棋の格言で、将棋盤全体を俯瞰して見るためには、4つの香の位置およびその周辺を見るといいことですよという意味です。確かに、香は初期配置で、自陣および相手陣地の1段目の両端にあるので、そこに着目することで、広い将棋盤全体の面をもれなく見渡すことができますよね。

私が子ども将棋教室などをしていると、とにかく多いのが「ニ歩(将棋における禁じ手の1つ。同じ筋に2枚歩を並べてはいけないルールを指します。)」ですそして、子どもたちが二歩をしてしまう主な原因が「将棋盤全体を見ていない」です。というのも、将棋初心者の子どもの場合、相手の王様にばかりに気をとられてしまい、その結果として、相手の陣地はよく見えているのに、手元の自分の陣地は見えていないということが起こるのです。

ニ歩をしないためにも、自分が手番の時は、意識的に四隅の香をチェックするようにしましょう(^^)

3.成るに慣れる

9×9の将棋盤では、手前から3段が自分の陣地。
9×9の将棋盤では、手前から3段が自分の陣地。

将棋をはじめる時に、最初から9×9の将棋盤を使う人もいれば、5×5や3×3といったマスの少ないの将棋盤から入る方も結構いるのではないかと思います。5×5の将棋盤には、「対局に時間がかからない」「駒を積極的に動かせる」「焦点を絞りやすい」など9×9の将棋盤にはない利点がある一方で、将棋の基本動作の1つである「成る」を学習しづらいという問題点があります。

「なる」とは、自分の駒で相手の陣地(相手側から見て手前3段)を突破し、裏返ってパワーアップすることを指すのですが、通常の9×9の将棋盤だと3段目で成るところを、5×5の将棋盤だとを1段目で成るというルールになっていることがほとんどです。

そのため、5×5から9×9の将棋盤に移行した時に、なかなか3段目で成ることができないということが起こります。

こんなことを言うと、9×9の将棋盤だとマスが多すぎて難しいし、5×5の将棋盤だと「成る」を覚えにくいし、「一体どうすればいいの?」と思われそうなのですが、通常の「成る」がなかなか身につかないという子どもたちにオススメなのが「王様おにごっこ」です。

「王様おにごっこ」は、いつつのイベントでも大人気の将棋の盤と駒を使ったゲームです。使う将棋盤は9×9、使う駒が玉と飛車と角それぞれ1枚です。詳しいルールはコチラで解説するとして、9×9の将棋盤が広いといえども、登場する駒がたったの3枚なので、これだと将棋初心者の子どもたちでも安心ですよね(^^)

ちなみに、これは、5×5の将棋盤より9×9の将棋盤の方が優れているということでは決してありません。どちらも一長一短で、いいところもあれば悪いところもあるという感じです。

とはいえ、本将棋といえば、9×9の将棋盤になります。小さい将棋盤で満足することなく、ぜひ本将棋の面白さ、奥深さまで到達してほしいというのが本音です。本将棋の導入として、5×5の将棋盤や小さい盤を使い、「取る」「打つ」「成る」「詰み」といった将棋における基本動作を覚えてしまったら、ぜひ9×9の本将棋に切り替えてあげてください(^^)

✳︎

いつつの9×9の将棋盤は軽くて持ち運びなどにとても便利です。

4.小さな目標を立てて対局する

遠いゴールをいきなり目指すのではなく、小さい目標をいくつか設定することが退屈させないコツ
遠いゴールをいきなり目指すのではなく、小さい目標をいくつか設定することが退屈させないコツ。

4番でも少し触れたのですが、9×9の将棋盤を使って将棋初心者の子どもが対局を行うと、決着がつくまでにとても時間がかかってしまいます。恐らくですが、時間がかかる理由は前述にもあるように「どこに焦点を当てていいのか分からない」「どの駒を動かしていいのか分からない」からであり、その結果、テキトーに駒を動かしたり、逆に盤上にあるありとあらゆる駒の可能性を全部考えようとして、駒を1回動かすにも必要のない長考をしてしまいます。そうなると、9×9の将棋盤に慣れる以前に将棋そのものが楽しくなくなってしまいますね(⌒-⌒; )

そこで、私が将棋初心者の子どもたちに指導する時は9×9の将棋盤を使って対局をする場合には、ちょっとした工夫をしています。

その工夫とは、将棋はそもそも「相手の王様を捕まえるゲーム」なのですが、それを、まずは「相手の駒を取りにいく!」「駒を交換する!」「自分の駒を成る!」と小さな目標を立ててあげることです。

子ども同士の対局でも、この小さな目標を意識して対局を進めてみると良いと思います。

「相手の王様を捕まえる」というのは、将棋初心者の子どもたちにとっては、実はかなり先にある遠いゴールになります。例えば、フルマラソン42・195キロを完走するには、まずは5キロ地点、続いて10キロ地点、そして折り返し地点と、それぞれの地点を通過しなければなりませんが、「相手の駒を取る!」「駒を交換する!」「自分の駒を成る!」というのは、将棋におけるそれぞれの通過地点のようなものです。9×9の将棋盤を使いつつも、それぞれの通過地点を目標に据えて対局を行うことで、子どもたちもぐっと考えやすくなり、最終的にはゴールにたどり着きますよね(^^)

5.とにかく実戦

ある程度将棋を知っている人との実践が上達への近道。
ある程度将棋を知っている人との実戦が上達への近道。

1〜4で9×9の将棋盤に慣れるための様々なコツや練習法について述べてきましたが、9×9の将棋盤に慣れるには、結局のところ9×9の将棋盤を使い込むしかないように思います。大人になるとちょっと時間がかかってしまうかもしれませんが、お子さんはけっこうすぐに慣れてくれると思います。

ただ、ここで1つ重要なのは、できるだけ将棋経験者に相手をしてもらうということです。将棋初心者の子どもどうしだと、いつまでたっても対局が終わらないことがあります。じつは私も小さいころ、父が囲碁盤を買ってきて、父と妹、そして私で試しにやってみたことがありました。でも3人ともまっったくわからない。囲碁の場合、最初に9路盤という小さな盤を使って覚えていくこと多いのに(後から知りましたが・・。)、父が買ってきたのは本当の大きさのもの・・。真ん中あたりで、私と妹が一直線に白と黒を並べ「引き分けだね」で終わり・・。まったくわからない人同士だと、面白さに気がつけないこともあるかもしれません。その後、囲碁とのご縁は、将棋連盟の囲碁部におじゃまして教わったり、先日吉原由香里さんが教えている入門講座を受けたりして、目からウロコ。囲碁の面白さ、奥深さの一端に触れることができました。

そんな経験から少しでも知っている人と指す、というのは大きいと思います。

もしかすると、「そんなこと言われても、私も将棋にそんなに詳しくないし、まわりに将棋をする人もいないのにどうすればいいの?」となる方も多いかもしれません。しかし、そんなときのためにあるのが将棋教室なのです。将棋の先生なら、将棋初心者の子どもたちと一緒に将棋を指しながら、適宜アドバイスを交えたりなど、上手く対局を導いてくれます。

藤井聡太四段の活躍により、今でこそ将棋ブームなんて言われていますが、子どもたちにとって将棋は、つい最近までそんなに身近なものではなかったように思います。ましてや、習い事の選択肢として将棋教室が上がってくることはほとんどなかったのではないでしょうか?

そのため、将棋教室についてあまり知られていないと思うのですが、将棋教室というのは、案外どこのまちにでもあって、なおかつ、道具やユニフォームなど予め準備しておかなければならないものもほとんどなく、習い事としてとても気軽で始めやすいものなんです(^^)。我が家の子どもたちも、いろいろな習い事を試しましたが、将棋教室は最初に揃えるものが少ないということを実感しています。

もし子どもたちが将棋を始めて、「もっと将棋を指したいな」と思ってくれたら、ぜひ将棋教室もご検討ください。

子どもの将棋教室をお探しの方はコチラから( ´ ▽ ` )ノ

さて、本日は、将棋初心者の子どもたちが、9×9の将棋盤に慣れるためのちょっとしたコツや練習方について紹介させていただいたのですがいかがでしたでしょうか?

確かに、9×9の将棋盤というのは将棋初心者の子どもたちにとっては大きく、最初のうちはなかなか慣れないかもしれません。しかし、9×9の将棋盤に慣れてくると将棋の楽しさもぐんと増し、さらに、将棋が楽しくなってくると、9×9、81マスあるからこそ、将棋はおもしろい!となるかと思います( ´ ▽ ` )ノ

 

おすすめ

9×9の将棋盤で上手く対局ができるようになるには、「将棋のルールと駒の動かし方を知っている」だけでは不十分で、駒の交換やタダで取られない王手など、将棋を指すためのテクニックが必要になります。

いつつのオリジナルテキスト「はじめての将棋手引帖2巻」は、これらのテクニックを分かりやすくまとめています。書き込みができるドリル形式なので、小さ将棋の学習を着実に定着することができます。

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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