神戸新聞「随想」

2017年8月4日

花の「香」りに誘われて

「1五やり」。これは私のほろ苦い思い出の一幕。

事件が起きたのはNHKの「小学生将棋名人戦」で読み上げ係を務めたときのこと。読み上げ係とは、対局者が指した手を符号(盤上の駒の位置)で読む役目のことなのですが、正しくは「1五香(きょう)」と読まなくてならないところを、大きな声で「1五やり」と読み上げてしまいました。

不器用ながらも、ひたすらまっすぐ進む香車は私に似ているかも。
不器用ながらも、ひたすらまっすぐ進む香車は私に似ているかも。

じつは、我が家では、「香」のことを「ヤリ」と読んでいました。まっすぐ突き進む駒の特性で、昔の将棋棋士にも「ヤリ」と読んでいた方がいらっしゃったようです。父がなぜ正式名称の「きょうしゃ」と教えてくれなかったのか・・・と思いつつ、私も女流棋士になり正式な呼び方は知っていたのですが、初めてのテレビ出演でとても緊張していたのでしょう。

さて、このエピソードにはまだ続きがあります。このときの準決勝戦を戦っていたのは、なんと当時まだ小学生だった渡辺明現竜王・棋王。渡辺竜王が大人になり、再び一緒にお仕事をする機会があったのですが、「やりと読んでいたのを今でも覚えています」と言われてしまいました。とほほ。

こうして改めて当時をふり返ってみると、女流棋士になりたての頃の私は、「猪突猛進」、器用じゃないけどとにかく前に進むのが好きという点で香車とよく似ていたような気がします。そういえば、神戸でよく出没するイノシシも、猛スピードでひたすらまっすぐ突進するあたりが香車とそっくりですよね。

桜も満開。花の香りとお団子の香ばしさに引き寄せ寄せられてお花見を満喫している私です。

この記事は、神戸新聞「随想」にて、中倉彰子が寄稿したものと同じ内容のものを掲載しております。
:『神戸新聞』2017年4月11日 夕刊

子どもたちに将棋を始めてもらいたくなったら、いつつの将棋道具がオススメです(^^)

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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