将棋を楽しむ

2016年6月6日

将棋名人戦、対局前日の裏側〜佐藤天彦新名人誕生〜

将棋界の頂点が一字にかける思い

「心」と「道」

この木板に書かれた二つの文字は、第74期将棋名人戦第3局で共に対局した羽生善治名人と佐藤天彦八段がそれぞれしたためたものです。

このように名人戦をはじめとしたタイトル戦では、対局前日に、対局者が盤駒やそれを入れる箱などに直筆で筆を入れる「揮毫(きごう)」が行われます。

実はタイトル戦で使用される盤駒について、将棋連盟が用意することもあるのですが、基本的には対局が開催される土地で、タイトル戦で使用するのにふさわしいと思われるいい盤駒を一般の方に持ってきてもらうことが多いようです。

そこに、記念として対局者の二人が筆を入れるわけですが、トップ棋士による揮毫の入った盤や盤の箱は一生の宝物になりますよね。

第74期名人戦第3局、盤駒の揮毫。
第74期名人戦第3局、盤駒の揮毫。

それにしても、お二人とも本当に綺麗な字です。

さて、この揮毫で書く文字についてですが、特に決まったルールがあるわけではありません。大体は、棋士によって幾つかパターンを持っていて、シーンによって使い分けているのですが、

羽生名人が「心」という字を、佐藤八段が「道」という字を書いたとき、二人は一体そこにどんな思いを込めたのでしょうか。想像が膨らみますよね。

また、盤駒への揮毫では、漢字一文字の他に、タイトル戦の名称や、タイトル戦が行われた会場の名称が記されます。

対局者のサインの下には、落款と呼ばれる印鑑のようなものが烙印されていて、これも棋士によってそれぞれオリジナルのものがあります。

ちなみに私の落款は師匠に作ってもらったものです。

私の落款は師匠からいただいたものです
私の落款は師匠からいただいたものです。

名人戦独特の緊張感は対局空間からも発せられる

対局の前の日といえば、対局検分もこの日に行われます。対局検分とは、対局前日に対局者2人と立会人の3人で行う対局環境の確認のこと。先ほどお話した揮毫もこの対局検分の流れの一部なんです。

皆さんご存知かと思うのですが、将棋のタイトル戦は、全国津々浦々、様々な場所で開催されます。毎回異なる場所で行うため、その都度音がうるさくないかや、光の加減、対局に集中できるのかなどをきちんとチェックします。

対局中のあの独特な張り詰めた緊張感は、真剣な二人の棋士の姿からはもちろんのこと、こうした締まりのある空間からも漂ってくるのかもしれません。

名人戦での羽生名人。緊張感のある空間は、対局前日の対局検分で環境チェックされたもの。
名人戦での羽生名人。緊張感のある空間は、対局前日の対局検分で環境チェックされたもの。

各地将棋ファンとトップ棋士の触れ合い

また、対局検分の後には、前夜祭(今回私たちが参加した第74期名人戦第3局では「対局者との集い」という名称でしたが)というものが行われます。前夜祭とは対局者と地元の将棋ファンが一緒に、対局の前日にふれあうことができるイベントのようなものです。

ここからは私も将棋のいちファンとして申し上げます。

名人戦とは将棋界の頂上決戦のようなものであり、その頂上決戦で盤を挟んで座ることができる二人というのは、憧れでありヒーローのようなものです。

もちろん名人戦において、最も心惹かれるのは「タイトルのかかった大一番で、トップ棋士どうしが盤面でどのような対局を繰りひろげるのか」といったことです。

しかし、対局前日の前夜祭も将棋ファンにとっては嬉しい楽しい1日になると思います。

トップ棋士と直接触れ合える機会はなかなかないので、前夜祭が一生の思い出になるかもしれません。

全盛期と比較すると将棋の競技人口は減ってしまいましたが、こうして全国をまわりながら、将棋を応援してくれるたくさんの人たちと触れ合う機会を持つことで、きっとトップ棋士の方々も「もっと将棋の魅力を伝えたい」ってモチベーションを上げていくのではないでしょうか。

新名人誕生にわく将棋界

第74期名人戦を制した佐藤新名人。
第74期名人戦を制した佐藤新名人。

先日、第74期名人戦の決着がついにつきました。佐藤八段が羽生名人をくだし、佐藤新名人の誕生となりましたね。

今回の名人戦の結果を受け、弊社が購入させていただいた名人戦の盤駒が、佐藤新名人が初めてのタイトルを獲得した記念すべき盤駒になりました

今後も株式会社いつつでは、この盤駒を子どもたちのために活用していきたいと思います。

いつつのオンラインショップ神戸の将棋屋さんいつつでは、名人戦の盤駒と同じ山形県天童市で生産された将棋駒も取り扱っています。

この記事の執筆者中倉 彰子

株式会社いつつ代表取締役、女流棋士。女流アマ名人戦連覇後、94年高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。プロとして公式戦を戦うだけでなく、NHK杯将棋トーナメントなどテレビ番組の司会や聞き手、イベント司会などでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、育児と仕事の両立に奮起。2007年日本女子プロ将棋協会設立に参画。事業部長として、地域や子どもたちに長く親しまれるイベント作りを心がけている。子育てエッセーを地方紙7新聞に連載し、近年は将棋と知育・育児を結びつけるような活動を広く展開。2015年10月株式会社いつつを設立、代表取締役に就任。女流二段。法政大学人間環境学部卒。@AKIKOPDG

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