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将棋を楽しむ 将棋を学ぶ 2018年5月7日

将棋に詳しくないママでも子どもたちの戦況が分かる5つのポイント

中倉 彰子

将棋は助言禁止。だからこそ、せめて心の中でだけでも子どもたちにエールを送りたいのだけれど、いかんせんママには将棋のルールが分からない。はたして今うちの子は攻めているのか、それとも負けそうになっているのか・・・・。

子ども将棋大会などで、子どもの置かれている状況が全く分からず、こうした歯がゆい思いを経験したお母さんは結構いらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、野球であれば、ホームランを打ったり相手チームからたくさん三振を奪ったり、サッカーであればゴールを決めたり、スーパーセーブをしたりなど、子どもたちの活躍ぶりを分かりやすく目で確認することができます。

一方将棋はというと、9×9の将棋盤を挟んだ二人が、ささっと盤上の駒を動かすだけ。子どもの状況をようやく把握できるのは、長い対局が終わった後、どちらか片方が「負けました」といった時です。

これだと、お母さんからしてみると、子どもたちが勝っても負けても、「おめでとう」とか「残念だったね」と、ありきたりな言葉しかかけようがないですよね。

将棋は子どもたちの戦況が分かりにくい
将棋は子どもたちの戦況が分かりにくい

仕方ないこととはいえ、もし子どもたちが勝ったのなら「ここが良かったね」と、ちゃんと活躍したポイントを褒めてあげたいし、たとえ負けたとしても「でもこの辺りは結構良かったよ」と励ましてあげたいのが母親心だと思います。

ぜひぜひお母さんたちにもお子さんと一緒に将棋を楽しんでいただきたいのですが、今回のいつつブログでは、将棋が分からないお母さんたちに向けて、子どもたちのここを見ると子どもたちの戦況が分かるよというポイントについていくつかお伝えしたいと思います(^ ^)

もちろん、将棋はどこでなにが起こるか分からない競技。途中の戦況が悪いからといって一発逆転のチャンスはいくらでもあるし、途中で有利だったからといってそのまま勝ちきるとは限りません。子どもたちがどのような状況であったとしても必ず最後まで応援してあげてくださいね。

1. 指すテンポ

子どもはいい指し手を思いつくとすぐ指したくなる
子どもはいい指し手を思いつくとすぐ指したくなる

子どもはとても分かりやすいのです。次に指したい手を見つけるといてもたってもいられなくなり、相手のお子さんが駒を盤に置くやいなや、自分の駒を動かしたり、相手の駒を取りに行ったりします。ですので、調子がいいときほどポンポンと早指しをし、逆になかなか差さなかったり長考をしているときは、いい指し手が思いつかず悩んでいる証拠です。

ただ、次々と指し手が思いつくのは非常にいいことなのですが、ポンポン指し過ぎるのはトラブルの元です。「手を離した!」「離してない!」というもめごとは、大会ではもっとも多いトラブルの1つです。対局前や対局と対局の間にでも、「相手の手が離れたのを確認してから、自分の指し手を動かすようにしようね。」とアドバイスをしてあげると良いと思います。

初心者の域をぬけだし強くなってくると、全体的に落ち着きゆっくり目に指すようになってきますし、「悪くなる前に考える。」ということができるようになってきます。

 

2. 手の位置

攻めてる時は将棋盤の上の方で手が動く
攻めてる時は将棋盤の上の方で手が動く

将棋の対局には、「攻め」と「受け」2つの場面があります。攻めている時は、相手の玉を捕まえるために自陣の駒をどんどん成って(手前から見て上3段で駒を裏返しパワーアップする)敵陣を突破したり、持ち駒を比較的相手玉の近くに投入します。一方受けの時は相手が自陣に攻め入っているので、自玉を守るために、自分の王様の近くに他の駒を集結させたり、危ない場所から王様を逃すために、玉の駒そのものを移動させます。

つまり、攻めている時ほど盤の上部の駒を、受けの時ほど手元の駒を意識せねばならず、必然的に子どもたちは、自分自身が置かれている状況に合った場所で手を動かしています。

ただし、上の方で手が動いてるから有利、下の方で手を動かしているから不利かというと一概にはそうは言えません。なぜなら、将棋の1局はとっても長いもの。通常よほど棋力差がない限り、どちらかが一方的な展開になるということは少なく、一進一退の攻防を繰り返すこととなります。

3. 持ち駒が多い

持ち駒があれば色んなことができる
持ち駒があれば色んなことができる

単純ではありますが、持ち駒が多いということは対局を進める上でとても有利です。例えば、自分の持ち駒の数だけ、相手の戦力を奪っているということだし、持ち駒は盤上の駒とは違い好きな時に好きな場所に打てるので、持ち駒を増やすことで出来ることがたくさんあります。

例えば、盤上の歩を成るのはけっこう大変ですが、持ち駒を使って垂れ歩(成ることを狙って4段目に歩を打つ)をすれば、成るまであと1歩ですみますよね。

ただ、1つ気をつけたいのは、将棋の目的は持ち駒を集めることではなく相手の王さまを捕まえることです。特に初心者のお子さんに多いのですが、駒台から駒があふれ出すくらいに持ち駒を持っていたにもかかわらず、いつの間に負けてしまったということがよくあります。なので、お子さんがちゃんと持ち駒を使えているのか、時々駒台の上をチェックして駒の増減を確認するのもいいかもしれません( ´∀`)

4. 駒が成っている

成り駒をつくって戦力拡大
成り駒をつくって戦力拡大

大きな大会になるほど遠目での対局観戦になるので少し見辛くなるかと思うのですが、成っている駒が多ければ多いほど有利な状況にあると言えます。

2番でも少しお話ししましたが、敵陣に突入して駒を裏返しパワーアップさせることを将棋用語で成るといいます(ちなみに、将棋大会では裏も黒色の駒が使われることが多いので、成っているのかいないのか見分けるのが難しいのですが(;´д`))。成るとパワーアップするわけなので、当然のことながら敵陣で成っている駒が多いということは、それだけ戦力の拡大に成功しているということです。

5.途中でチェスクロックが登場する

チェスクロックの登場はいい試合のとき
チェスクロックの登場はいい試合のとき

チェスクロックとは、1手30秒以内に指すなど時間制限をかけるためのものです。対局者はお互いに決められた制限時間内に一手指しチェスクロックのタイマーを止めます。

通常、対局の途中でチェスクロックが登場するのは、対局が長引いているいる時です。プロ同士の対局だと数時間の長丁場になることも多々ありますが、1日の決められた時間内でいくつもの対局を消化しなくてはならない子ども大会ではそうゆうわけにもいかないですよね。

では、なぜ対局が長引いてしまうのか、その理由は対局者二人の実力が拮抗しているからです。つまり、お子さんの対局中にチェスクロックが登場したら、それは手に汗握るいい試合をしているという証なのです。

さて、本日は、子どもたちの対局のここを見ると大体の戦況が分かるよというポイントについてお話ししましたがいかがでしょうか?

これで将棋についてあまり詳しくないというお母さんたちも、もう歯がゆい思いをしなくてすみそうですし、子どもたちの観戦もより楽しくなること間違えなしです٩( ‘ω’ )و

ただ、繰り返しになりますが、どんなにお子さんが絶好調でも、逆に形勢が悪くなっても、将棋での助言はマナー違反です。対局中は静かにお子さんを見守るようにしましょう。

また、たとえお子さんの対局結果がどのようであっても、対局が終わったらまず最初に「将棋のアドバイス!」ではなく「よくがんばったね(^ ^)」の一言を掛けてあげるようにしてください。将棋に詳しくなくてもできるサポートについては、こちらの記事でご紹介しています。

レベルに合わせて、ほんとうの初心者からワンステップずつ学べるはじめての将棋手引帖シリーズ。特に、はじめて子ども将棋大会に参加したいというお子さんには、はじめての将棋手引帖2巻がおすすめです(*^^*)

引き分けや反則といった将棋の細かいルールのほか、二文字駒に慣れるためのレッスンも監修しています。

ほかにも、神戸の将棋屋さんいつつでは、将棋をモチーフにした雑貨も製作販売しています。

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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