株式会社いつつ

将棋を学ぶ 2017年7月25日

はじめての将棋手引帖3巻 〜作者中倉彰子による見どころ解説〜

中倉 彰子

みなさん、大変お待たせいたしました( ;´Д`)

ついに、ついに「はじめての将棋手引帖3巻」を発売することになりましたーーー!!

はじめての将棋手引帖3巻が発売になりました。
はじめての将棋手引帖3巻が発売になりました。

2巻の発売からおよそ7か月。通常の出版物ならそんなに時間をかけることはあまりないのですが、どうしてもたくさんの人に「将棋っておもしろい!」と思ってもらえるようなものを皆さんにお届けしたくて、今の今までかかってしまいましたm(__)m

1巻も2巻ももちろん皆さんに将棋を楽しんでもらえるよう色んな工夫を盛り込んだのですが、なぜ今回の3巻でこんなに時間をとったのかというと、3巻の段階で「覚える」ことから「理解する」「活用する」へとステップアップしていく、その第一歩だからこそ、楽しく身につけていただくために工夫と試行錯誤を何度も繰り返したからなのです!(◎_◎;)

1巻では将棋の駒の動かし方と将棋の基本的なルール、2巻では駒の価値や駒の交換など、将棋を指すための基本的なテクニックについて学習してきましたが、今回3巻でお伝えする内容は、ズバリ「基本的な戦法」についてです。

基本的な戦法とは、いわゆる「定跡」を指しているのですが、なぜここからがステップアップなのかというと、これまでは「ルールを覚える」とか「駒の動かし方を覚える」とか終始「覚える」ことを重点的にやってきたわけなのですが、ここからは、「相手がこうきたらこうする」「このような狙いがあってこの1手を指す」など「考えて指す」ということが必要になってくるからです。言い換えるならここからぐんと将棋らしくなってくるわけですね(^-^)。

最初に作った試作品を社内や小学生に解いてもらったところ、

「突然レベルアップしたというか、突き放された感じ。」

「続けるのが辛くなってしまうことがありました。」

「専門的な形ばかりが多く紹介され、覚えることが多く、混乱しました。」

「パニックです〜涙。」

との声……。これではまずい!

ここから構成を含めてイチから作り直しです。

実は、「覚える」(はじめての将棋手引帖2巻まで)から「考える」(はじめての将棋手引帖3巻から)への橋渡しは、私自身も含めた多くの将棋指導者がどう導いてあげるべきなのかと頭を抱えているポイントでもあります。なぜなら、難しいことをそのまま伝えてしまうと、それを受け取る側の子どもたちも「なんだか難しくておもしろくないな」と感じてしまうからです。

ましてや、はじめての将棋手引帖シリーズでは、将棋初心者でも無理なく楽しく将棋が学べることを大切にしているので、子どもたちに「将棋難しいからいいや」と思われてしまうととても悲しいわけです(;_;)

そこで今回のいつつブログでは、私が、皆さんに「将棋は難しい」ではなく「将棋は楽しい」と思ってもらえるように「はじめての将棋手引帖3巻」に凝らした工夫のいくつかを3巻制作過程の裏話も含めてたっぷりお話したいと思います( ´ ▽ ` )ノ

1. 丸暗記しない学習

将棋の基本戦法の手順をただ丸暗記すると大変。
将棋の基本戦法の手順をただ丸暗記すると大変。

最初にもお話したように、「はじめての将棋手引帖3巻」では定跡と呼ばれるものについて学習します。定跡とは、このように駒を動かせば、効率良く対局を行うことができるという手順のようなもので、学習法としては手順を丸暗記することが一般的なのですが、「はじめての将棋手引帖3巻」の解説ページでは、あえて丸暗記させないような工夫を盛り込みました。

それでは、「丸暗記させない工夫」とはどのようなものなのかというと、それは手順をできるだけ書かないということです。将棋テキストの中には、様々な手順を説明するときに、▲2六歩△8四歩▲2五歩・・・・と棋譜がズラッと羅列されているものがあります。しかしこれだと、将棋初心者の子どもだと、覚えるのも辛そうですよね。そこで手引帖の3巻では、このような棋譜の羅列をできるだけ少なくして、その代りに「なぜこの形なのか」「なぜこの形を目指すのか」、その狙いや意味についての解説をできるだけ簡潔に加えました。

3巻に限らず、手引帖シリーズを発売する時は毎回試作品の段階でいろんな人にテストをしてもらっているのですが、今回の3巻のテストのフィードバックとして最も多かったのが、「もし相手が定跡通りに指し手こなかったらどうするの?」というものでした。確かに、丸暗記で身につけた戦法では、相手が想定外の動きをした時に応用できないですよね。子ども同士の対局だと、定跡通りに進まないこともよくあると思います。そういう場合であっても、序盤における目標を持っておくことで狙いをもった指し手を繰り出せるように、「狙い」と「意味」をお伝えすることにこだわりました。

よく感想戦(対局者どうしで対局後にする反省会のようなもの)などを見て、「プロ棋士の方は1局の指し手を全て覚えているのですか!?」という質問をもらうのですが、棋士が百をも超える指し手を覚えていられるのは、ちゃんと指し手の意味を理解しているからなのです。

2. 多くを盛り込まず実戦で生かせるものだけを厳選

将棋の囲いはいっぱいあるけど、全部覚えなくても大丈夫!
将棋の囲いはいっぱいあるけど、全部覚えなくても大丈夫!

将棋の定跡の中には、「囲い」というものがあります。囲いとは、将棋の序盤(戦いの準備期間にあたります)に築くお城のようなものです。金銀桂香の駒を自陣の玉周辺に集結させて、王様を守ります。

さて、将棋に詳しい人ならよくご存知かもしれませんが、実はこの囲い、数えたらきりがないくらいにいくつも存在します。しかも、どれもこれも、一朝一夕で覚えられるような単純なものであればいいのですが、中には囲いを完成させるまでに何十手の手続きを踏まないといけないものあり、これら全てを完璧に覚え、使いこなすというのは、いくら記憶力に自信があったとしても至難の業かと思います(^_^;)

そこで「はじめての将棋手引帖3巻」では、将棋初心者のお子さんでも使いやすく、なおかつ実践でも役立つ基本的な、「美濃囲い」「穴熊囲い」「舟囲い」「矢倉囲い」の4つの囲いに絞って解説を行いました。解説する囲いの数を絞ることで、1つ1つについてより詳しく解説しています。

囲いはこの他にもたくさんあります。興味がでてきたら、いろいろな囲いを調べて試してみると楽しいと思います。

そしてこの囲いを身につけると簡単には負けない将棋になっていきますよ。

3. 学習内容を踏襲した問題作成

知識だけ詰め込んでも、実践で生かせないと意味がない。
知識だけ詰め込んでも、実践で生かせないと意味がない。

ありとあらゆる問題集を評価する基準として、「いかに分かりやすく説明できているか」と同じくらい大切なチェック項目として「いかにいい問題が出題されているか」というものが挙げられます。

すごく丁寧で分かりやすい解説があったとして、もしその後に出てくる問題があまりにも解説そのままの簡単すぎるものだと、問題を解くという行い自体が機械的な作業となってしまい、それこそ前述にもある応用する力に結びつきません。なんなら、簡単すぎるがゆえに正解してしまい、分かったつもりになってしまうという危険性もあります。しかしその一方で、あまりに問題が難しすぎてもよくありません。問題を解く子どもにしてみたら、難しすぎる問題と向き合うことは、雲を掴むような感じで、逆にやりごたえがないということになりかねません。

つまり、問題の作成者としては、子どもたちがある程度「考える」ということをした上で、なおかつ自力で答えが導き出せるような問題をつくらないといけないわけなんですが、将棋の場合、この問題の難易度調節というのがとても難しくなります。例えば、歩の駒1枚、マスが1つズレるだけでも問題の難易度が大きく異なるということがあります。

今回「はじめての将棋手引帖3巻」を制作する上で、私が特に悩んでいたのがこの問題作成のところなのです。試作品を作ってはあ〜でもないこ〜でもないと試行錯誤しているうちに、実は途中で心が折れてしまいそうになったのですが、そんな折に、私の元に心強い味方がやってきました。いつつブログをいつも読んでくれている人はご存知かもしれませんが、今年の3月末からいつつスタッフとして元奨励会員の荒木が加わったのです。入社と同時にさっそく手引帖作成に加わり、私が思い悩んでいた問題作成についてもいろんな意見をくれました。

彼自身、奨励会という環境の中で、厳しい対局をいくつもこなしてきたということもあり、彼の提案は主に実践を意識した盤面を作る上で大いに助けになりました。ですので、はじめての将棋手引帖3巻では、ただ基本的戦法の種類や手法を覚えるだけではなく、問題を解くことで、さらに実戦の中でその戦法をどのように生かすのかということまで学べるようになっています。

紆余曲折ありましたが、将棋についてディスカッションすることで最終的にはいい問題がたくさんできたように思います。残りあと4巻・5巻とありますが、今後もいつつ全社で協力しながら、より良い「はじめての将棋手引帖」ができるといいなと思います(^^)

4. 動画解説

文章では分かりにくいこともお、動画なら理解しやすい。
文章では分かりにくいこともお、動画なら理解しやすい。

はじめての将棋手引帖シリーズは、どの巻にも動画解説が付いているのですが、実はこの3巻ほど動画解説が生きる巻はないと思います、笑

最初の方でも申し上げたように、「はじめての将棋手引帖3巻」で取り扱う基本的戦法は、急に難易度が上がるため(逆に言うとこのあたりから将棋らしくなるわけですが)、将棋指導者でも頭を悩ませるポイントになります。

そのため、言葉で表そうとすると、どうしても説明が長くなってしまうわけですが、口頭ならともかく、その長い説明を文章で見せつけられると、真面目に読む前から、なんだか心が折れてしまいそうになりますよね(^_^;)

そんな時こそ、動画解説です。文章による説明では解釈に時間がかかるところも、大盤を使っての動画解説なら一目瞭然ですよね。

※ちなみに、動画解説は、各単元の解説ページにあるQRコードをスマートフォンで読み取ることで見ることができます。DVD等が付属しているわけではありません。また、お客さまの環境によっては、利用できない場合がございますので予めご了承ください。

おまけ:将棋道具を用意しよう

実際に将棋盤と駒を使えば、将棋の学習がもっと楽しく。
実際に将棋盤と駒を使えば、将棋の学習がもっと楽しく。

さて、今回は3巻の見どころについてたっぷりお話しさせていただき、その中で何度もここからぐんと将棋らしくなるというお話しをさせていただいたのですが、できれば、ここからは手引帖だけを読み進めるのではなく、実際に将棋盤と駒を用意して、将棋盤の上で駒を動かしながら、問題を解いたり解説文を理解することをオススメします。

繰り返しになりますが、はじめての将棋手引帖では、将棋初心者の子どもたちでも無理なく楽しく将棋を学べるということを大切にしています。将棋をしていて、私が1番楽しいと思うのは、自分の考えたことを、実際の将棋盤の上で実際の将棋の駒を使って体現した時です。もちろん、3巻で扱う領域から難易度が上がるので、実際に駒を動かしながら将棋を指す感覚を身につけてほしいということもありますが、何より、ぐんと将棋らしさが増す3巻からは、将棋の楽しさを存分に楽しんでもらいたいと思っています( ´ ▽ ` )ノ

+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-+:-+:-+:-+:-+

「はじめての将棋手引帖 3巻」先行予約の受付を開始しています!

※先行予約は終了いたしました。

+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-+:-+:-+:-+:-+

「はじめての将棋手引帖3巻」の先行予約を受付します。(発売日は8月7日)

なお、先行予約をしていただいた方には、素敵な先行予約特典を用意しています(^^)

先行予約受付期間:2017年7月23日〜2017年8月1日午前9:00

★先行予約特典★

パターン1:女流棋士中倉彰子によるお子様の名前入れ

「はじめての将棋手引帖3巻」に女流棋士中倉彰子が、直筆でサイン及びお子様のお名前を書かせていただきます。

申し込み方法:BASEの購入画面上でサインありをお選びいただき、備考欄にお子様のお名前、性別をご記載ください。

※こちらのパターンの場合、先行予約ではありますが、発売日同日の8月7日の商品発送になります。

パターン2:いち早く「はじめての将棋手引帖3巻」をお届け

8月7日の発売に先駆け、8月1日に商品を発送、いち早く「はじめての将棋手引帖3巻」をあなたのお手元にお届けします。

申し込み方法:BASEの購入画面上でサインなしをお選びください。

※こちらのパターンの場合、中倉のサインやお子様のお名前を入れることができません。

※8月1日 9:00 amまでに入金確認がとれたお客様への対応となります。銀行振込、コンビニ払い、Pay easy決済では即時の入金確認がとれませんので、余裕を持ってお申込みいただくか、クレジットカード決済をお選びください。

※手引帖の3巻と別の商品を同時に購入された場合は、全ての商品が同日発送となりますので、あらかじめご了承ください。

+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-+:-+:-+:-+:-+

「はじめての将棋手引帖3巻」の先行予約は終了しています。現在はカラーミーshopの「神戸の将棋屋さんいつつ」にて販売しておりますので、ご興味がありましたら、ぜひ1度お試しください( ´∀`)

将棋のほん

はじめての将棋手引帖3巻

「将棋を指す」から「考えて指す」へ

1,650円(税込)

商品番号:126775972

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

関連記事

いつつへのお仕事の依頼やご相談、お問合せなどにつきましては、
こちらからお問い合わせください。

メールでお問い合わせ