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連載:東京新聞「子育て日記」 2016年5月9日

修行の成果は -プロ女流棋士中倉彰子 子育てブログ

中倉 彰子

前回触れました「浜松錬成塾」という、お寺での子ども将棋合宿(2泊3日)。毎年講師として行っているのですが、今回は思い切って長女のマイ(7つ)を参加させる事に。

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マイは入門クラス。お寺に着くと、すぐに講師と生徒で分かれます。

マイは上級生のグループに混ぜてもらっていましたが、知らない子ばかりで、少し戸惑っている様子。

少し心配になり、しばらくしてから様子を見に行くと、同じ入門クラスの女の子と仲良くなったよう。将棋の講義が始まる時は、もう楽しそうにおしゃべりをしていて、ホッとしました。

1日目の将棋の時間が終わり、夕食。皆で箸袋に書いてあるお経を読み、ご飯のお椀を一度、上に掲げてからいただきます。
「食事は、生命をいただく事。有難く感謝の気持ちでいただきます。」和尚さんのお話を、皆真剣に聞いています。

普段は、よくおしゃべりしながら食べているマイも、この時ばかりは、神妙な顔をして、静かに食べています。

2日目のメインは森内名人の講話。残念ながら私は聞けませんでしたが、マイの説明によると、名人も子どもの頃には色々な失敗をしたんだけど、失敗しても良い事もあるよ。というお話しだったそうです(笑)。ちゃんと聞いてたのかなぁ。

座禅・掃除・食事・将棋等々、濃密な3日間は、アッという間に過ぎ、帰りは、新幹線で、東京方面に帰る子供達を引率し、無事終了。

マイに、今回の合宿の感想を聞くと・・。
「1日目の夜は、泣いちゃった。2日目は大丈夫だったけどね。」泣くほど心細かったんだ~と、ちょっと驚きました。「上級生や中学生のお姉さん達と、一緒に遊んだのが楽しかった。」

娘の嬉しそうな顔を見て、連れて行って良かったなと思いました。

さて、合宿から帰って来た次の日の朝。

箸袋のお経を読んで「いただきます!」と言って、ご飯を食べ始めるマイ。マキもマネをして「いただきます。」とぺこり。シンはなんだか面白そうだぞ、とばかりに、「何タラ~カンタラ~。」とお経を読むマネ。
マイは得意気に妹と弟に向かって話し始めます。

「お寺では、絶対に残してはいけないの。最初に減らしておくことはできるよ。あと、おかわりの時間があって、その間、おかわりしない人も待っていないといけないの。」ポカンとしている二人に、マイの説法は続きます。

「あとね。座禅と言って、じっと座るの。お坊さんが、棒で背中を叩くの。痛いんだよ~。」いや、そんなに痛くはないでしょ、と心の中でツッコミを入れながらも、お姉さんらしくなってきたなぁと、娘がとても頼もしく思えました。

あともう少しで夏休みも終わり。親としては、「やっと学校が始まってくれる!」という正直な気持ちもありますが(笑)、子供を通して、色々な経験をさせてもらえたなと感じます。

そうそう、マイは修行の甲斐なく、朝寝坊の癖がすっかりついてしまっています。2学期が始まるまでには建て直さないとね。

*
この記事は、東京新聞にて中倉彰子が連載している「子育て日記」と同じ内容のものを掲載しております。
:『東京新聞』2013年8月30日 朝刊

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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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