株式会社いつつ

将棋を学ぶ 2016年11月9日

将棋を愛した偉人菊池寛が教える将棋上達法

金本 奈絵

「将棋愛好家の著名人」と聞くと皆さん誰を思い浮かべますか?

子育て中のママさんたちだと、タレントでイクメンのつるの剛士さんや、もうすぐ公開される、映画「聖の青春」で羽生善治さん役を演じる東出昌大さんなど爽やか系を思い出すかもしれませんね、笑

しかし、今回のいつつブログで取り上げるのは、「将棋愛好家の著名人」の中でも、重鎮中の重鎮、菊池寛です!!

菊池寛といえば、自身も大正から昭和を代表する小説家(劇作家)でありながら、文芸春秋の創刊や、芥川賞・直木賞の設立など、事業主としても日本の文学界に多大なる功績を残した人物としてその名を馳せています。

文学に対する情熱もさることながら、将棋に対する愛情も並々ならぬものだったらしく、将棋世界第80巻12号付録『将棋雑学ゼミナール〜めざせ将棋会ものしり博士!』(田丸昇九段 構成)によると、将棋に熱中するあまり、将棋盤の脇に置いてあるお菓子を取ったつもりで駒台の駒を誤って手にとり、口に入れて噛むことがあったというエピソードも紹介されています。

また、「菊池寛全集 第十四巻」(中央公論社)には「将棋はとにかく愉快である。」という冒頭で始まる「将棋」というタイトルの随筆が収録されています。

そこでは、菊池寛なりの将棋上達の極意が記載されているので、今回のいつつブログではそれらの中からいくつか紹介したいと思います。

1.自分より二枚くらい強い人と指すべし

最初は二枚落ちから徐々にハンデを縮めていきましょう。
最初は二枚落ちから徐々にハンデを縮めていきましょう。


(いつつ特製おしゃれな布盤で対局♪)

菊池寛いわく、とにかく盤数をこなすこと、特に自分より二枚上手(飛車角落ち)の人と、飛車角、飛車香、飛車、角、香と徐々に駒落ちのレベルを変化させていくのが1番確かな上達法であると述べています。

菊池寛自身も、床屋の主人や幸田露伴の同門の館花浪路という老人など、将棋が強いといわれる人たちとこの手順を踏みながら、将棋の腕を磨いていったようで、随筆にも「二枚位違う人に、だんだん指し進んで行くことは自分の棋力の進歩が見えて非常に愉快なことである」と書き残しています。

2.定跡を覚えるべし

また菊池寛は、1の末尾の文章の後にこのように続けています。「しかし、絶えず定跡の研究が必要である」と。

特に初段やそれ以上の棋力の持ち主を相手に、定跡を知らずに対局を挑むことを「下駄で日本アルプスに登るようなつまらない労力の浪費」であると例えています。

飛車角落ちにも飛車香落にも、角落ちにも飛車落地にも指すべき手があり、それを知らずに勝てるわけもなく、もし万が一、定跡を知らずに勝てたとすれば、それはそもそも手合い違いの将棋だそうです(^_^;)

3.「駒落ち」を嫌がるべからず

1.と少し似てますね。

菊池寛がなぜ駒落ちにこだわるのかというと、きちんとハンデをつけないと上手がつまらないからだそうです。対局をするのであれば互いの棋力がどうであろうと、双方楽しくなくちゃならず、将棋を楽しむためには力が均衡であることが重要であるという信念があったのかもしれませんね (^ ^)

確かに、初段に二枚落ち以上の棋力の持ち主であれば、平手でも相当させることに違いないので、四・五番指すうちの一・二番は勝てることもあるそうです。特に最初の一番では上手が自然に指していることが多いので勝ちやすいというのもあるみたいです。しかし、こうしたことから、いつも平手で指している人、指したがる人も少なくないようなのですが、実際は、二番以降は上手も「負けまい」と挑んでくるのでなかなか勝つことができないそうです。もし二度続けて勝てたなら、確かに勝ったということができ、もし3回連続で勝つことができたなら、圧倒的に勝てたといってもいいそうです。

ちなみに、この点については弊社代表の中倉も「定期的に教えている生徒さんには、一度ではなく、二度連続勝って初めて次のステップに行くようにしている」と申しておりました。

また、菊池寛いわく、「若殿の将棋桂馬の先が利き」という川柳が言うように、上手がわざと上手く負けてくれるパターンも考えられるようなので、自分の棋力を冷静に見極め、適切な駒落ちの手合いをつけることが、より将棋を楽しむためのコツなのかもしれません(^ ^)

4.怒るべからず、ひるむべからず、焦るべからず、あまり勝とうとするべからず

対局をするときは怒らずひるまず焦らず
対局をするときは怒らずひるまず焦らず

これは将棋の棋力を上げるための方法というより心意気ですね。

菊池寛いわく悠々と盤面に向かい、どんなに悪手があったとしてもうろたえず、なるべく相手に手数をかけさせるように奮闘すべきであると述べています。

この点についても、「1回の悪手ならまだ挽回の余地がある場合もあるので、ここで焦って連続でミスをしてしまわないように気をつけないといけない」と中倉が共感していました。

さて、今回は菊池寛の将棋上達法を幾つか紹介させていただいたのですがいかがでしょうか。中倉だけではなく皆さんが共感できることも多いのではないかと個人的には思っています(^ ^)

また、明日から使えそうな上達法もあるので(さすがに色んな定跡を明日までに覚えるというのは難しそう(^_^;))、ぜひ自分の棋力や子どもたちの棋力を伸ばしたいという方は参考にしてみてください。

参考: 「将棋」菊池寛 青空文庫作成

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他にもいつつブログでは、歴史上の人物と将棋にまつわるエピソードを紹介した記事がたくさんあります。ご興味あれば、ぜひご一読ください。


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この記事の執筆者金本 奈絵

株式会社いつつ広報宣伝部所属。住宅系専門紙の編集記者を経て現在に至る。

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