将棋を学ぶ

2018年10月24日

駒落ち攻略虎の巻〜8枚落ち〜

それぞれの駒落ちのパターンにおける学習のポイントと達成目標を分かりやすく解説する駒落ち攻略虎の巻シリーズ。第4回目は、8枚落ちの虎の巻について解説します。

駒落ちとは、本来二人の対局者の棋力差をなくすことで、勝敗の行方を分からなくするもの。対局をおもしろくする方法の1つなのですが、将棋初心者にとっては、将棋の学習という側面でもとっても効果的なのです。

★過去の「駒落ち攻略虎の巻」を見る★

歩なし10枚落ちの虎の巻

10枚ちの虎の巻

9枚ちの虎の巻

8枚落ち虎の巻

さて今回学習する駒落ちは、「8枚落ち」です。前回の「9枚落ち」との違いは、前は王様の横についてくる金が1枚だったのに対して、8枚落ちからは王様の左右どちらにも金が張り付きます。9枚落ちの時にもお話したのですが、金はまるで王様を守るボディガードのような存在でしたね。そんな屈強な駒がさらに1枚増えたのですから、前回までと同じ方法では上手く行かなさそうですよね。

8枚落ちの目標

相手の弱い場所に狙いをつける

大駒と小駒を連携させて攻める

8枚落ち
8枚落ち

相手の弱い場所に狙いをつける

過去の虎の巻シリーズで、既に子どもたちにも身についていることと信じているのですが、将棋で攻めるときのポイントは、相手の隙をついて大駒を成ることでしたね。玉ががっちり金に守られて、一見とり入る隙がなさそうな8枚落ちの上手の陣形にも、やはり弱点はあります。その弱点とは、ズバリ相手の駒がない端っこです。8枚落ちの場合だと、1・9筋が狙い目になりますね。

それでは、具体的にみてみましょう。

まずは、いつも通り7七歩と角道を空けます。通常なら、この後は飛車先を伸ばして歩の交換をして敵陣突破をするですが、8枚落ちの場合、1筋または9筋が上手の弱点になるので、今回は角を使って9筋を突破する方法を紹介しましょう。初期配置の8八の位置のままだと、上手陣の弱点である9三のマスに角の利きを届かせることができませんよね。そこで、1度角を6六の位置まで移動させますこれで、この角は相手の3三のマスを睨んだまま、9三のマスも狙うことができます。この3三のマスを狙うことで、上手の☖3二金の動きも抑えているのです。

写真1 角の利きを両方に
写真1 角の狙いを両方に利かせます

さて、ここで1つ大切なことがあります。この後の展開として、通常なら攻めのセオリー通り、もう一つの大駒である飛を成ることを狙うのですが、今回は相手の9筋を狙った「端攻め」で突破したいと思います。もちろん、飛車先の歩を伸ばして攻めるのも王道のやり方でもOKなのですが、今回はもっとも効率よく勝てる方法、端攻めの威力を体験してもらいます。そして、端攻めする時に、飛の代わりに角の仲間となり協力するのが9筋にいる香車です。

まずは、角を6六の位置に上げて成る準備ができたら、今度は☗9六歩☗9五歩と香先の歩をつきます。☗9四歩☖同歩☖同香と歩の交換をします。ここまできたら、数の攻めで、9三のマスは上手には受かりません。香を成る、角を成る、ことができれば、「端攻め突破!」大成功です。

写真2 仲間の香も連れてきましょう
写真2 仲間の香も連れてきましょう

大駒と小駒を連携させて攻める

成香という心強い仲間を敵陣まで連れてくることができたら、満を持して、もう一人の攻めの主役である飛の登場です。いつも通り飛車先から敵陣突破を狙ってもいいのですが、今回は香と同じく、既に破られている9筋に振って9筋から成る方が効率がいいですね。教室ではここで「はい、ここで働いてない駒がいますが、どれでしょうか?」と子どもたちに聞くと、「うーん」と悩んでから「あ!飛車だ!」と気がついてくれます。他にも動いていない駒はあるのですが、飛車は攻めの主役の駒。飛車が、右の香や桂のようにしばらくずっとそのまま・・だともったいないのです。初期配置(2八)のまま全く動いていなかった飛を、9八、9三飛成とダイナミックに動かして竜を作りましょう!

働いていない飛車を動かしましょう。
働いていない飛車を動かしましょう。

さて、ここからが8枚落ちの最大のポイントです。

先ほど、馬と竜だけで相手の王様を捕まえるのは難しいという話をしましたが、なぜ、難しいかというと、王様を捕まえるには、その横にいる金をはがさなくてはならないからです。そして、この金をはがす役目を担うのが、わざわざ連れてきた香(今は成香)です。

では、写真2の場面から、成香でどのように金を外すといいかというと、8三の成香を、7三、6三と、金に近づけていきます。もし、ここで「そんなことするとせっかくの成香が金に取られちゃうよ」と思った人がいたら、過去のいつつブログ「将棋初心者の子どもたちのつまずきポイント①駒の価値」「将棋初心者の子どもたちのつまずきポイント②駒の交換」を復習してください(^ ^)

6三まで成香が追いかけてくると、上手の金は流石に逃げることができないので、☖6三同金☗同竜となり、これで相手の金をはがすことに成功です!

大駒の竜と小駒の成香を連携させて上手の金を取ろう
大駒の竜と小駒の成香を連携させて上手の金を取ろう

今回の事例のように、竜と馬に加えて、歩や香、桂など小駒の成駒を作ることができたら、大駒と連携させて攻めることが大事です。これははじめての将棋手引帖四巻99日目「大駒と小駒のきょうりょくでせめる」でも扱いますが、攻める時にとても大事な考え方です。積極的に相手の金や銀と交換し、相手の金銀を盤上からなくすようにしていきましょう。

さらに強くなるために

と金を作ろう

持ち駒の歩を使ってと金を作ろう
持ち駒の歩を使ってと金を作ろう

写真の盤面は、NHK将棋フォーカスでいつつ将棋教室の生徒が8枚落ちで中村王座にチャレンジした時の一幕です。ポイントは2四のマスにある歩です。これは、元々2筋にあった歩ではなく、持ち駒の歩を成ることを狙ってここに打ったものです。このように、と金になることを狙って三段目や四段目に持ち駒の歩を打つことを「垂れ歩」といいます。

と金は、動きは金と同じなのに、取ると歩に戻ってしまうことから「と金は金と同じで金以上」とか「まむしのと金」なんて言われていますが、相手にとって非常に厄介な存在です。

駒落ちの場合、下手側の持ち駒はどうしても歩が多くなるのですが、だからこそ、歩の手筋を上手く使えるようになることが駒落ち攻略の鍵の1つになるとも言えます。

※歩の手筋ははじめての将棋手引帖4巻でも多く扱っています。

相手にと金をつくらせない

相手が作られたら嫌なと金は、当然自分の陣地で作られても嫌なものです。もし、相手が三段目や四段目に歩を打ってきたら、「あ!これは垂れ歩かな?」と危険をちゃんと察知して、その危険をそのまま放置するのではなく、きちんと対処するようにしましょう。

さて、今回のいつつブログはいかがでしたでしょうか?

大駒の効きを敵陣に届かせるために、一手間かけたり、竜や馬に加えて新たに仲間を連れてきたり、9枚落ちまでにはなかった要素が盛りだくさんでしたね。必ずしも、上手が今回の解説の通り指してくるというわけではありませんが、相手がどのように指してきたとしても、肝となるポイント同じですし、8枚落ちで学んだことは平手の対局でも必ず役にたちます。
この8枚落ちを子どもたちに大盤で解説した後に、実際に私との指導対局8枚落ちをすると、多少手順が違っても方針が理解できたのか、だんだんと勝てるようになってきます。

最初は難しいかもしれませんが、慣れるまで何度か8枚落ちを指しながら、今回学習した内容をしっかり定着させましょう。

今回学習した、「歩の手筋」や「大駒と小駒のきょうりょくでせめる」は、1日15分のスモールステップで無理なく楽しく将棋を身につけることができる「はじめての将棋手引帖シリーズ」の4巻に監修しています。今なら、お得な4巻5巻セットもあります٩( ‘ω’ )و

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この記事の執筆者中倉 彰子

株式会社いつつ代表取締役、女流棋士。女流アマ名人戦連覇後、94年高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。プロとして公式戦を戦うだけでなく、NHK杯将棋トーナメントなどテレビ番組の司会や聞き手、イベント司会などでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、育児と仕事の両立に奮起。2007年日本女子プロ将棋協会設立に参画。事業部長として、地域や子どもたちに長く親しまれるイベント作りを心がけている。子育てエッセーを地方紙7新聞に連載し、近年は将棋と知育・育児を結びつけるような活動を広く展開。2015年10月株式会社いつつを設立、代表取締役に就任。女流二段。法政大学人間環境学部卒。@AKIKOPDG

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