株式会社いつつ

将棋を楽しむ 将棋を学ぶ 2016年10月13日

将棋の駒を使った簡単なゲーム やまくずし

中倉 彰子

いつつブログでは今までに、「将棋の駒の動かし方を使いながら、将棋を覚えたその日のうちに楽しめる!」をコンセプトとしたゲームをいくつか紹介してきました(^ ^)

先日、将棋フォーカスでいつつの取り組みを取り上げていただいた際にも、「しょうぎパズル」と「飛車角おにごっこ」を紹介していただいたのですが、いつつでは、「本将棋を指せるようになるまでのステップをどのように軽減するか?」ということに全力で取り組んでいます。

※いつつHPでおなじみの将棋パズルが書籍化されました( ´∀`)

そこで、今回のいつつブログでも駒を使った簡単で楽しいゲームを紹介します。
第4回目で紹介するゲームは「やまくずし(しょうぎくずしと呼んでいるスタッフもいました)」です。

駒の動きを使わないゲームなので、今まで紹介してきたゲームの中では、一番簡単です。それでも、やまくずしには、きちんと「本将棋に役に立つ要素」があるのです!

(ちなみに、いつつブログで紹介してきた将棋の駒を使ったゲームを、簡単な順に並べると…)

やまくずし
駒の動かし方を知らなくても楽しめるし、子どもには難しい駒の漢字にも親しみが持てます。
しょうぎパズル
駒の動かし方をしっかりと把握することにつながります。動かし方を見ながらであれば、初めてでもできる遊びです。
王様おにごっこ
ママのミスに頼らずしっかりと詰ますためには、意外とテクニックがいる遊びです。初手で王手をかけるのではなく、2二飛車成とできるようになれば、卒業ですね。
利きを作ってみよう
利きは目に見えないものですので、子どもにとっては難しいかもしれません。駒の動かし方をマスターできたら、今度はじっくりと、駒の利きが見えるようになるまで、練習していきましょう。

ルール

将棋の駒を取り出し、駒を真ん中に山のように積みます。

良い駒でやまくずし!
良い駒でやまくずし!

じゃんけんで最初の番の人を決めます。最初の番の人は、指を一本だけ使い、駒を滑らせて、自分の近くまで引っ張ります。

1本指で滑らせる
1本指で滑らせる

「カチャ」という、駒が何かとぶつかる音がしたら、その番は終了です。そのまま指を離します。

自分の近くまで駒を持ってくることができれば、持ってくることができた駒の得点が自分に加算されます。得点は玉・王→飛→角→金→銀→桂→香→歩となるように自由に決めてください。

(はじめての方向けの一例)
玉・王 ・・・ 10点!
飛・角 ・・・ 8点
金・銀 ・・・ 5点
桂・香 ・・・ 4点
歩 ・・・ 1点

(複数の駒を一気にとっても大丈夫です。この場合、うまく持って帰れれば、合計点が全て入ります!)

複数の駒をゲット!
複数の駒をゲット!

(この場合、一回で8点ゲットですね!)

カチャと駒音がならずに、駒を盤の端まで持っていけたら、その駒をゲットできます!一回取ったら、隣の人に番が移ります。

(はじめてのお子さんと楽しむことを想定して、このようなルールにしています。ひとりのひとがどんどんと取ってしまうと、その他の子どもが飽きてしまうからです。また、このルールの方が「点数が高いものをとろう!」という動機づけにもつながると思っています。

一般的には「得点を挙げることができたら、その人が失敗するまでチャレンジできる」というルールが多いようにも思っています。どちらを採用しても大丈夫です)

これを山がなくなるまで繰り返します。その上で、ひとりひとりが取ったポイントの合計を出します。一番ポイントが多い人が勝ちです!

やまくずしをやることの意味とは?

上でも少し触れましたが、このゲームは、将棋のルールを利用したゲームではありませんので、将棋のルールを覚えることにはつながりません。それでも、私の子ども将棋教室では、教室の最後に皆でやまくずしを楽しむのですが、その理由はいくつかあります。

将棋の駒に親しみが持てるようになる

将棋の駒に使われている漢字、大人から見るとそれほど難しい漢字ではありませんが、子どもにとっては、「難しそう」、「とっつきにくい」と感じる大きな要因になっているように思います。

そういったことを考えたときに、やまくずしなどの遊びで、駒に親しみを持ってもらう、この駒で遊ぶと楽しい、ということをわかってもらうことで、子どもたちが将棋に親しみを覚える第一歩になるように思います。

本将棋の駒の価値が理解できる

すぐ取れる駒が2種類ある場合、1回しかできないので、「どちらの駒を取るべきか」という意思決定を子どもが自分で考えて判断します。その時には「歩より、他の駒のほうが得点が高いよね」などとアドバイスするようにしています。

駒の価値を覚えることでそれが本将棋に活かせます。本将棋でもある駒で取れる駒がふたつある場合、どちらを取るほうが得なのか、ということを考えて指していく必要があります。自分の駒と相手の駒を交換した時、得をした交換か損をした交換がわかるようになると強くなります。

やまくずしは「将棋の駒を積み木的に利用して遊ぶゲーム」、つまり「将棋のルールがわからない子とも遊べるゲーム」なのですが、この段階で、得点によって「駒の価値」を理解してもらうことができます。

もちろん本将棋では、「金があれば詰むから、飛車を切って金を取りたい」というシチュエーションもあり、駒の価値は正確にいえば、局面によって変化します。ただ、入門段階ではとりあえず何の価値が高いか、ということをしっかり覚えることが重要です。

以上の2点の理由から、「入門としてやまくずしを行うことで、その後の将棋入門教室の内容の「予習」ができる」というわけですね(^ ^)

駒の価値や駒の交換については、女流棋士中倉彰子が、将棋初心者の子どもたちの「分からない」を追求して制作した「はじめての将棋手引帖」シリーズの二巻で学習します( ´∀`)

ちなみに私が将棋を初める前や初めたばかりの子どもたちに「山くずし」をおすすめするのは他にも、理由もあります。

将棋で勝てない子にも勝つチャンスがある

将棋のルールを使わない、ということはすなわち、「将棋ではまけちゃう子でも、やまくずしでは勝てる可能性がある」ということです。

実際に私の教室でも、初めて教室に来てくれたお子さんでも勝つ、ということがよくあり、その子のモチベーションや場の雰囲気が盛り上がります。

子どもの集中力を引き出せる!

やまくずしはシンプルなゲームですが、駒音が鳴ったらアウト!なので、みんな自分の番のときには駒音を鳴らさないように気をつけるのはもちろん、他の人の順番のときにも駒音が鳴ったか注意深くきいています。子どもたちは勝つために集中して楽しんでくれます。

やや落ち着きのないお子さんも、本将棋のルール説明などに入って行く前に、集中してゲームを楽しむことを覚えてくれるように思っています。

お子さんの個性がわかって面白い

このゲームは本当にお子さんの個性が出るゲームです。

例えば、慎重に取れる駒を手堅く取っていこうとするお子さんもいれば、いっぱいの駒が取れるような部分にワイルドに挑戦していこうとするお子さんもいるなど、お子さんたちの本将棋とは違った個性が垣間見えて可愛いです。なので実は私もこのゲーム大好きなんです、笑

慎重に駒を取ってきたら「取れたね!すごい!順調に点を増やしているね!」、大胆に取りに行って失敗しても「あー惜しかったねー。全部とろうとするなんてすごいね!」というように、子どもたちとの話が弾みます。

いつつ将棋教室でも、将棋の駒を使った簡単なゲームを通じて、将棋初心者の子どもたちに将棋の楽しさを伝えています。体験会も実施していますのでお気軽にご参加ください(^^)

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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